講座322 QA⑩発達障害の人に言ってはいけない言葉

先日の研修会での質問に答えるシリーズは今回で最後です。

どの質問も私ひとりでは考えつかないものばかりで新鮮でした。

いろいろな人と交流するって大事ですね。

Q10 発達障害があるなあと思った時に、その人に言ってはいけない言葉はありますか?

あります。

言われても出来ないことを言うのは勘弁して欲しいです。

「のに」を理解することが大切です。

発達障害の人に言ってはいけない言葉

発達障害の特徴はたくさんあって全部を覚えるのは大変です。

だから私は「のに」だけでもいいと思っています。

「のに」だけでも理解していれば、理解の80%はカバーできます。

ADHD:理解力はあるのに行動面で困難を持つ

ASD:勉強はできるのに対人関係に困難を持つ

LD:他のことはできるのに特定の勉強に困難を持つ

DCD:多くのことはできるのに不器用さを持つ

共通するのは「のに」です。

この「のに」を理解出来れば80%です。

こんな経験はありませんか?

何かをやろうと思っていたその時に、人から「やれよ!」とか「やりなさい」と言われたら嫌ですよね。

それと同じです。

「今、やろうと思っていたのに!」

たとえば、ADHDですと、理解力はあるのに行動はできないというのが特性です。

頭ではわかっているのです。

やらなきゃいけない、と。

やっちゃいけない、と。

それがわかっているけど、人間にとっては理解と行動は別物なのです。

理解したら行動できる人もいるでしょうけど、脳の仕組みとしては、別なんですから、出来なくても不思議ではないのです。

そして、人に言葉(口で言う)という行為は簡単です。

「なんで、できないんだよ!」

「今、言ったじゃないか!」

わかっているならできるだろうというスタンスです。

これが「言ってはいけない言葉」です。

やろうと思っていたのに言われるのと同じです。

わかっているけどできないのです。

わかっているんだから言わないで下さい。

支援するなら、できるようになるための工夫をお願いします。

たとえば、人が話している途中に口を挟むのは良くないことは知っています。

でも、その話が楽しかったり、場が盛り上がったりすると、どうしてもしゃべりたくなっちゃうんです。

ドーパミン出すの大好きですから。

だから、冷たい言い方で「黙って!」とか、「また勝手に!」とか言わないで下さい。

駄目なことはわかっているんです。

言われると落ち込むんです。

これまで何度もいろんな人に叱られて来ました。

叱られることに敏感なんです。

ですから、もし言うんだったら、行動を助ける言葉を言って下さい。

「チョットA君!割り込む時は『ハイ!ハイ!ハイ!』って手を挙げてから言ってくれる?」

そんなアドバイスです。

これはA君にコミュニケーションのスキルを与えているわけです。

いきなり割り込まれると場が壊れますが、それよりはマシですよね。

「わかった。じゃあA君、言っていいよ」

みたいな感じになりますよね。

そうやって社会性をアップさせるのです。

たったこれだけのアドバイスですが、ここにはADHDに対する理解がもう一つ含まれています。

ADHDの人は興奮している時の制御が苦手です。

ですから黙らせるのは悪手です。

黙らせるのではなく、動かす方がいいのです。

だから「ハイ!ハイ!ハイ!」とハイを3回も言って手も挙げるというアクションを例示したわけです。

本人の特性にも合っていて、なおかつ、コミュニケーションを崩さないようなスキルです。

こういうことは別にADHDの人じゃなくても知っておいて損はないですよね。

こういうスキルのことをユニバーサルデザインと言います。

ユニバーサルデザインというのは「一石二鳥」という意味です。

それを「みんなに優しい」とも言うわけです。

もし言うんだったら、このように行動を助ける言葉を言う訳です。

それが難しければ、もう一つ別な方向もあります。

それは「ほめる」ということです。

冷静に考えてみて下さい。、

話の途中で割り込まれるのは本当に迷惑なのでしょうか?

場が盛り上がって良い面もあるのでは?

思わぬ展開から職場にとって大切な気づきが生まれるかも知れません。

ADHDの特性が活きる瞬間です。

ですから、黙らせるのではなく、どんどん焚き付けてしゃべらせる。

「すごいじゃん!」「楽しい!」

と、ほめてあげる。

そういう方向も大切です。

どうですか?

これだったら出来そうですよね。

反省するのは後からでもできます。

「また調子に乗ってしゃべり過ぎちゃった…」

という反省は、言われなくても本人が痛いほどわかっているのです。

ADHDの人は24時間テンションが高いわけではありません。

静かな時もあります。

冷静に振り返ることもしているんです。

別に「その時」じゃなくてもいいじゃないですか。

そういう理解も大切です。

どうでしょうか?

「のに」の意味が伝わったでしょうか。

「のに」の理解が80%というのは決して大袈裟な話ではありません。

応用範囲は広いのです。

それがわかれば「使ってはいけない言葉」も見えて来ると思います。

この記事に投げ銭!

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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2件のフィードバック

  1. 畠山文 より:

    娘は診断は受けてませんが、ADHDの特徴があります。度々怒りすぎたと落ち込みます。今回の記事で、「のに」を思い出しました。私も先生の講座を受けて理解しているのに、できてないと気が付きました。このような記事が改めての気づきになり、助かります。ありかとうございます。

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