講座303 「おっぱい」の迷信

 目 次
1.胸の大きさは関係ない!
2.赤ちゃん主導の授乳
3.吸啜刺激とプロラクチン
4.望ましい授乳回数

1.胸の大きさは関係ない!

いや、知りませんでした!

胸の大きいお母さんの方がおっぱいがたくさん出るんじゃないかと思っていました。

でも、そんなことはないんですね。

ちょっと理系な育児ブログ」を運営されている牧野すみれさんは言います。

乳房の大きさは、母乳の生産量だけでなく、ためられる量すら、関係ないことが分かっています。『母乳が足りない?と思ったら読む本』

この本を読むまで私は誤解していました。

女性の乳房というのはミルクタンクみたいになっていて、「母乳を貯める所」だと思っていたのです。

でも、そうじゃないんですね。

乳房の9割は脂肪組織なんだそうです。

残りの1割が「母乳を作る組織(乳腺組織)」で、

この乳腺組織の仕組みは誰でも同じ。

7~10個の乳腺葉があって、その1つの乳腺葉には20~40個の小葉というものが付いていて、そのうちの1つの小葉には10~100個の腺房というものが付いていて、その腺房に乳汁分泌細胞があるんだそうです。(高槻病院院内学習会2015『乳房の解剖と母乳分泌の生理』菊池新Dr.)

母乳はここで作られるもの(生産されるもの)ということです。

お母さん方には常識かも知れませんが、出産後は24時間作られ続けるそうです。

乳房は「貯める場所」ではなかったんですね。

ただ、生産された母乳がダイレクトに赤ちゃんの口に送り込まれるわけではなくて、作った母乳を一時的に貯蔵しておく場所はあるそうです。

それが乳管洞という所です。

でも、ここは意外に小さくて、私のイメージとはかなり違いました。

高槻病院 総合周産期母子医療センターの菊池新ドクターは次のように解説されています。

体のほかの部分(鼻の形や足の大きさなど)が人それぞれ違うように、乳房もそれぞれ違う形、違う大きさをしているものです。ごくわずかの例外を除けば、機能は同じです。(要約・水野)

つまりこれが、牧野すみれさんが書いている「ためられる量すら、関係ない」の意味だったのです。

しかも、この機能にはかなりの余裕があって、双子でも育てられるくらいに多めに準備されるのだそうです。(『母乳が足りない?と思ったら読む本』)

2.赤ちゃん主導の授乳

では、その機能を最大に活かすにはどうすればいいのでしょうか。

牧野さんは次のように言います。

授乳間隔が短いほど、母乳を作るホルモンのピークが続くので、生産量も増えるのです。(前掲著)

育児書やネットに流れる情報の中には「授乳は3時間おきに」というアドバイスがあるそうですが、赤ちゃんは「決められた時間に飲ませても満足しない」と牧野さんは断言します。

その理由はこうです。

1日に何回授乳するのか、1回の授乳にどのくらい時間がかかるのか、母子の組み合わせによって、授乳パターンはいろいろになります。授乳パターンは大人がコントロールしようとしない方が、赤ちゃんが順調に成長できる確率が上がるのです。(前掲著)

なるほどです。

これだと赤ちゃんはお腹が満たされるだけでなく、本能や意志も満たされるので発達によさそうです。

そう言えば、12人のお子さんを産んだ助産師YouTuberのHISAKOさんも同じことを書かれてました。

ズバリ、おっぱいはママ主導ではなく、すべて赤ちゃん主導であげるべし!
15分前にあげたばかりだとしても、赤ちゃんがほしがっているそぶりを見せたら吸わせましょう。
一日15回、20回、何回吸わせても構いません。(『妊娠・出産・子育て「困った」あるある解決BOOK』)

何かの本で読んだのですが、「授乳は3時間おきに」という考え方に縛られると母親にストレスがかかって疲れるだけでなく、ホルモンの分泌が悪くなって母乳の生産量が減ってしまうこともあるそうです。

赤ちゃん主導の授乳は、赤ちゃんにとっても母親にとってもよいこと(win-win)なんですね。

3.吸啜刺激とプロラクチン

母乳はプロラクチンというホルモンの刺激によって生産されます。

このプロラクチンを分泌させるのが赤ちゃんの吸てつ刺激(赤ちゃんが乳首を吸う刺激)です。

この吸てつ刺激があるたびにプロラクチンはたくさん分泌されます。

「出産後はなるべく早く授乳させた方がよい」という話がありますが、グラフから分かるように、出産後5~7日間吸てつ刺激が無いと、妊娠していない時のレベルにまで下がってしまいます。

つまり、母乳は生産されなくなるということです。

これは、脳が「もう作らなくていいんだな」と受け取ってホルモンの分泌を止めるからです。

作り過ぎると乳腺炎などの病気になり、母体に良くないからです。

4.望ましい授乳回数

先日、親しくさせていただいている助産師のマキさんに牧野さんの本を紹介した時の話です。

私:「授乳って一日8回くらいがいいそうですね。この本に書いてました!」

マキさん:「8回じゃ少ないと思いますよ!10回とか12回くらいは必要です!」

私:(持っていた本をマキさんに見せる)

マキさん:「あっ。『8~12回以上』って書いてありますよ!この「以上」が大事なんです」

見落としていました。

本にはちゃんと書いてありました。

・多くの女性は、1日8~12回以上授乳していると、プロラクチンの量がキープでき、十分な母乳が作られ続ける。

・新生児期は、直接授乳(直母)する回数が多いほど、授乳時間が長いほど、プロラクチンがたくさん出る。夜間授乳すると、昼間よりもさらにプロラクチンが増える。

・月齢に関係なく、授乳回数が1日5~6回程度まで少なくなると、プロラクチンはガクンと減って、母乳の生産量も減っていくことが多い。

やはり、プロにはかないません。

私が知らないことはまだまだありそうです。

最後に、赤ちゃんの授乳サインを察知する方法を本の中から紹介させていただいて終わります。

赤ちゃんが出すサインには段階がある】
1.まだ目が覚める前から落ち着きなくもぞもぞ動いたり、手で顔をこすったりして、おっぱいが欲しいアピールをする。

2.気づいてもらえないと、少しイライラした様子(息づかい)になる。

3.それでも気づいてもらえないと、最終的に泣く。

うーん!赤ちゃんの様子が目に浮かびます。

水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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6件のフィードバック

  1. つむちゃんのお母さん より:

    母乳量を保つには22時~2時の夜間授乳も大事だとか!
    私は上の娘と出かけることが多くて、授乳回数が減ったら、一気に出なくなり…。早々にミルク育児にチェンジしました。

    • 水野 正司 より:

      やはり回数は重要なんですね。
      分娩直後の回数も重要っぽいですね。
      赤ちゃんと対面できない場合は搾乳になりますが、
      搾乳も回数を分けてやればいいかも知れませんね。
      夜間授乳の効果は書いてあります。
      夜間授乳は昼間よりもプロラクチンが増えるそうです。

  2. 畠山文 より:

    この方のブログ、参考にしていました。お陰様で、母乳の出が悪くなることも、乳腺炎になることもなく授乳期間を終えました。

    乳房が肥大するのは、成熟し繁殖可能になったとのサインだと本で呼んだことがあります。四足歩行の場合は、発情期に陰部が膨らみ、サインとなりますが、二足歩行では隠れてしまうため、乳房を膨らましたとか。また、乳房や臀部に脂肪がついていることで、胎児へ送る栄養もありますとのことかなと。

    • 水野 正司 より:

      牧野さんの本はとてもわかりやすかったです。
      胸が膨らむのは赤ちゃんのためとしうよりサインなのかも知れませんね。

  3. みほ より:

    現在、10か月の3人目は、めちゃくちゃよく食べるので、日々の授乳が4〜6回です。

    たしかに、急激に母乳量が減ったなと思います。
    これからは、授乳は栄養面の役割は終え、
    精神安定、コミュニケーションになるんだなぁと思います。
    本人がいつまで求めてくれるのか、楽しみです。

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