講座160 人間だけが持つ特殊な感情
「桶谷式」と言えば、「桶谷式乳房マッサージ」で有名な母乳の管理方法です。
今日は、桶谷式母乳相談室で学んだ「さっとママ」の記録を紹介します。
2.お母さんの笑顔
3.人間だけが持つ特殊な感情
4.「うれしい」「楽しい」 という感情
5.睡眠について
1. おっぱいの時の不思議な行動
息子が生まれて三、四カ月頃、お乳を呑んでいる最中に不思議な行動をとるようになりました。
ちょこちょこっと呑んでは顔を上げ、
嬉しそうな穏やかな目で私を見つめ「アー」と言い、
再びお乳をちょこちょこっと呑んでは顔を上げ、
嬉しそうに私を見つめてまた「アー」と言います。
その表情を見ると私も思わず顔がほころんでしまうのですが、
これを授乳中に何度も何度もやるので私もしまいには噴き出してしまって、
「笑っているのもいいけど、落ち着いておっぱい呑みなさい」と声をかけてしまったものでした。
それでも彼は何度かその行為を続け、ようやく残りのお乳を落ち着いて呑み終わります。
2. お母さんの笑顔
当時、お世話になっていた桶谷式母乳相談室の先生にこの話をしたら、興味深いことを教えてくれました。
赤ちゃんの三、四カ月頃は脳の前頭前野が急速に発達する時期で、
「嬉しい」「楽しい」といった感情面が豊かに育っていく時期なのだそうです。
そして、その発達をよく促すのが「お母さんの笑顔」だというのです。
「お乳を呑む時の距離で赤ちゃんに微笑まれるとお母さんも思わず微笑むでしょう。それが赤ちゃんの前頭前野の発達を促して豊かな感情と情緒の安定を育てるんだよ。よくできてるでしょう」
と教えてくれました。
赤ちゃんが大好きなお母さんに抱かれ、大好きなお乳を呑みながら、
大好きなお母さんの笑顔を見つめることができる。
赤ちゃんは嬉しくなるだろうし、当然情緒も安定するだろうと思いました。
それがよく発達する時期だからこそ、うちの息子も先のような行動を取り始めたのなら、
本当に人間というのはよくできてるなあと思いました。
先生は続けて言いました。
「だからこそ、お乳をやる時にテレビを見たり、パソコンをしたりはしないの。赤ちゃんを見ながらお乳をやりなさい、というのはそういうことなんだよ」
「はあい」と反省しながら先生の話を聞きましたが、実行できるかどうかは自信がありませんでした。
(さっとママ)
3.人間だけが持つ特殊な感情
いいお話ですね。
私が注目したのは次の箇所です。
「嬉しい」「楽しい」といった感情面が豊かに育っていく時期
この「うれしい」「楽しい」という感情は人間だけが持つ特殊な感情だと言われています。
(詳しくは、田方篤志氏の「ロボマインド・プロジェクト」No.190人間だけが持つ意外な感情)
田方氏は例として「遊び」を取り上げています。
「遊び」って楽しいですよね。
じゃあ、動物って遊ぶと思いますか?
猫や犬は遊びますか?
一見、遊んでいるようにも見えますが、犬や猫の遊びは本能としての「反応」です。
遊びたくて遊ぶのではなく、猫じゃらしを振られたら反応してしまうのです。
犬にボールを投げたら走って追いかけてしまうのです。
田方氏はよくカエルの動画を例にします。
カエルにスマホで「ハエが飛んでいる動画」を見せると、
カエルは餌だと勘違いしてスマホに跳びつきます。
でもこれは「勘違い」なんかじゃないんです。
何も考えずに「反応」しているだけです。
「意識がない(無意識)」とも言えます。
一方で、人間などの高等な動物になると意識的な行動が増えます。
チンパンジーは子どもの頃、木の枝などを自分から取りに行って遊びの道具にします。
そして、それを使って子ども同士で遊んだりします。
これらは意識的な「遊び」です。
でも、動物の「遊び」は子ども時代だけに見られる行動で、大人になると消えるそうです。
このことは「ネオテニー」という考え方に当てはまります。
【ネオテニー】:生物が進化する時に「未来の姿」が現在の幼少期に現れる現象
サルからヒトに進化する時に「ヒトの姿」がサルの幼少期に現れます。
それが「遊ぶ」という行動です。
でもサルが遊ぶのは幼少期だけです。
大人のサルになったら消えます。
しかし、サルから進化したヒトでは「遊ぶ」という行動が大人になっても消えません。
ヒト以前では、「遊ぶ」という行動は「子どもの時だけ」に見られた特殊な行動でした。
ところが、「生涯にわたって『遊ぶ』ことのできる動物」が登場したわけです。
それが人間です。
ですから、ネオテニー理論を使えば、人間の次にやって来る新しい動物の特徴が予想できます。
それは、現代の子どもたちに見られる行動で、大人になったら消える行動です。
それが次代の「当たり前」になっていくわけです。
4.「うれしい」「楽しい」 という感情
話を戻します。
「うれしい」「楽しい」という感情は「遊び」の中から生まれたものだと考えられています。
そして、大人になっても遊び続ける動物は人間だけです。
人間だけが獲得した高度な生き方であり、
それとセットになっている感情が「うれしい」や「楽しい」なのです。
ですから、「うれしい」「楽しい」は人間特有の高度な感情だと言えます。
(「怒る」とか「不安」といった感情なら他の動物でもありますよね)
「うれしい」「楽しい」は人間特有の高度な感情
そして、この「うれしい」「楽しい」には超重要な性質があります。
「怒る」とか「不安になる」という感情はその状況が収まれば消えますが、
「 うれしい」「楽しい」はその状況が収まった後に拡散されるのです。
「またやりたいな」とか
「もっと楽しいことはないかな」とか
「あ!これやったら喜んでもらえるかも!」とか
「これも楽しいぞ!あれも楽しいぞ!」とか…
「うれしい」「楽しい」という感情が人間に文化・文明をもたらしたのではないか、
と田方氏は解説されます。
これ、現実に即してますよね。
子どもって、学校の勉強が楽しくなかったら勉強が嫌いになりますよね。
将棋の楽しさにハマったらどんどん上達しますよね。
ちょっとくらい失敗しても挑戦しようとするじゃないですか。
エジソンが失敗ばかりしていてもくり返し挑戦したのは発明が楽しかったからだと思います。
学校の勉強より発明が好きだったのでしょう。
赤ちゃんがお乳を呑んでいる時に「アー」とか言って楽しそうにするのも同じだと思います。
「お母さんとおっぱいが飲めてうれしいな」とか
「おいしいな」とか
「ぼくは自力でおっぱい飲んでるぞ。自力で飲めるってうれしいな」とか
「お母さんもうれしそうだ!楽しいな!」とか…
そういう感情が育まれているのだと思います。
そういう感情とは「うれしい」「楽しい」です。
そして、この感情が、この子が育っていく時に様々な活動の根本となって発展する。
いろいろな「うれしい」「楽しい」を見つけ始めるというわけです。
5.睡眠について
最後に睡眠について補足して終わります。
日中に生まれた感情は脳に記憶されると思います。
記憶されるのは睡眠中です。
もっと言えばレム睡眠の時間帯です。
覚えてますか?レム睡眠とノンレム睡眠?
夢を見る浅い眠りが「レム睡眠」、熟睡が「ノンレム睡眠」です。
この図が分かりやすいと思います。
で、レム睡眠の時に、日中の活動が整理されるのだと思います。
感情も整理されるはずです。
「怖かった」「不安だった」という感情は命を守るために重要なので「無意識」の中に記憶され、
「うれしかった」「楽しかった」という感情は文化文明の発展のため「意識的に使われる」ので前頭前野と結びついて記憶されるのではないでしょうか。
それが桶谷式の先生(産婆さんかな?)が言ったこの言葉の秘密だと思います。
「お乳を呑む時の距離で赤ちゃんに微笑まれるとお母さんも思わず微笑むでしょう。それが赤ちゃんの前頭前野の発達を促して豊かな感情と情緒の安定を育てるんだよ。よくできてるでしょう」
そして、重要なことは次の2つです。
(1)子どもの「うれしい」「楽しい」を大事にしよう!(人類の可能性ですからね!)
(2)大人の「うれしい」「楽しい」も大事にしよう!(人間だけが持ってる感情ですからね!)
紹介、ありがとうございます!
ロボマインド・プロジェクトは、AIで心を作ろうとしてますけど、一番、参考にしてるのは赤ちゃんや子どもです。
生まれて、世界をどうやって認識して、脳の中につくり上げるって、ものすごいことしてますから。
楽しくて、生きるに値する世界かどうかって、この時期に決まるってこと、もっと広く知ってもらいたいですね。
田方さんからコメントを頂けるなんて夢子のようです!YouTubeいつも楽しみにしています!(^^)/