講座603 「彼女」を死なせたものは何か
「旭川女子中学生いじめ凍死事件」(2019-2021)を扱った教育ドキュメントです。
この本の内容は、このブログで書き始めました。
書き始めたのは、2024年の9月です。
9月13日に報告書が公表され、5日後にそれを読み、読んだ直後にこのブログで少しずつ発信して行きました。
しかし、〈ブログでは扱い切れない〉と感じ始め、途中で発信をストップしました。
書くことをやめたわけではありません。
その後も調べ続け、書き続けました。
事件の真相を調べたのではありません。
教育というシステムの真相を調べたのです。
そのことが、爽彩さんの〝生きた証〟を引き継ぐことになると思いました。
二年かかりました。
ようやく形になりました。

1.目次
プロローグ──学校の問題は社会問題である
第1章【早期介入】「問題ありません」という言葉に覚える違和感
第2章【就学時健康診断】知能検査には「落とし穴」がある
第3章【教員養成制度】「暗記」で教師になれるシステムを問い直す
第4章【インクルーシブ教育】〈障害〉→〈検査〉→〈診断〉の一律思考から抜け出す
第5章【障害告知】「聞いてしまっていた」という報告書の言葉から考える
第6章【学級経営・学校運営】「児童理解」とは児童の何を理解することか
第7章【2E教育】「学校は行きたくないけど塾へは行く」が投げかける問い
第8章【個別の計画】不可解な「メモ禁止のルール」から見えるもの
第9章【宿題】「一回でも宿題を忘れたら」という指導に潜むマルトリートメント
第10章【学校間の引き続き】〈配慮〉と〈問題〉、どちらの視点に立っていたのか
第11章【カミングアウト(自己開示)】子供の生きづらさを深刻にする指導
第12章【性教育・安全教育】「性被害に遭う可能性」と「障害」の関連について
第13章【発達性トラウマ症】特性や個性は薬で治す対象ではない
第14章【いじめ問題】「悪いのは私」「私のせい」と言わせてしまった“教育”を超えていくために
エピローグ──我が子を亡くした三人のお母さん

2.内容
報告書が伝える廣瀬爽彩さんの「いのちの声」を手がかりに、
社会システムのどこに欠陥があったのかを可視化し、
子どもたちの「生きづらさ」に寄り添いながら、
〈最悪の結果を選ばずにすむ社会の創造〉に向けて14の提言をおこなう。
旭川市いじめ問題再調査報告書(公表版)は、PDF367ページに及ぶ膨大な記録です。
何度読んだか数え切れません。
どの辺りに、どんな事が書かれているかは、ほぼ分かります。
二人の人物の〈本気〉に触れました。
一人は爽彩さんです。
彼女は〈本気〉に生きました。
生き続けたいと思っていました。
だからこそ、その証を世の中に知らせたいと思いました。
もう一人の人物は、再調査委員会の委員長を務められた尾木直樹先生です。
尾木先生ご自身が、この報告書に対してどのように関わられたのかは分かりません。
委員になられた方は他にも4名いらっしゃいます。
しかし、尾木先生は「大津いじめ自殺事件」(2011)でも第三者委員会の委員を務めていらっしゃいます。
そして、この事件の内容も、その報告書も〝壮絶〟なものでした。
私は、二つの事件に関わられた尾木先生には、いじめに対する〈本気〉を感じられずにはいられませんでした。
そして、思ったのです。
「報告書」というものには、書きたくても書けない部分や本当は書くべきなのに書けない部分があるだろうと。
そこを読み解かなければならないと思ったわけです。
それが「社会システムのどこに欠陥があったのかを可視化する」とい作業でした。
そして、その欠陥こそが、「子どもたちの『生きづらさ』」を生んでいるのです。
人のせいではありません。
システムのせいです。
子ども「たち」としたのは、爽彩さんと同じように苦しんでいる子供が、この国には沢山いるからです。
その事実については、ここに述べるまでもないでしょう。

3.「14の提言」
作業は次のように行いました。
(1)367ページに及ぶ報告書の中から〈違和感〉を取り出す。
(2)その〈違和感〉の元になっているシステムを明らかにする。
(3)そのシステムを各章のタイトルにする。
(4)サブタイトルは、その〈違和感〉の焦点となっている課題とする。
(5)本文では、その課題に対する「正解」と「最適解」を示す。
「正解」とは、システムの中にある欠点を衝いた〈異議申し立て〉です。
その「正解」にもとづいてシステムを是正すれば、子供たちの「生きづらさ」は解消されるだろうという解です。
しかし、社会の中で現に動いているシステムを変更することは容易ではありません。
一個人、一冊の本の力でやれることではありません。
そこで本書では、「正解」を示しつつも「最適解」という解を提示することにしました。
「最適解」とは、そのシステムを自分たちの手で改善できる〈現在の最善手〉です。
本書を読んだ人ならば、すぐに取りかかれる、追試可能な情報(教育技術)です。
この「最適解」にもとづいてシステムを改善すれば、子供たちの「生きづらさ」をケアできるはずです。
第1章【早期介入】「問題ありません」という言葉に覚える違和感
第1章であれば、【早期介入】というタイトルが、〈違和感〉の元になっているシステムです。
サブタイトルの「『問題ありません』という言葉に覚える違和感」が、焦点となっている課題です。
その「正解」と「最適解」は、ぜひ本書をお読み頂いてご批正ください。
ちなみに、「14の提言」のうちの6つは、向山洋一先生から教えていただいた内容です。
〈学んだ〉ではなく「教えていただいた」というのは、〈レクチャーしていただいた〉という意味です。
本で読んだのではなく、向山先生が目の前で解説してくださった内容ということです。
それはセミナーや講演会などに限りません。
懇親会や会議などの空間で教えていただいた内容も含みます。
向山先生が〈これは社会システムの問題である〉としてレクチャーしてくださった内容を、今新たに〝社会問題〟として世に問うのが、この第1巻です。
ですから、とても大きな枠組みです。
書いた私自身が畏縮しています。
「これは本当に私が書いたのだろうか?」
「私ではないのではないか?」
事実、私一人の力では作り上げられませんでした。
校正者さん、図版作成者さん、デザイナーさん、写真家の方など、沢山の方々が関わっていらっしゃいます。
他にも私の知らないポジションの方々がいらっしゃることでしょう。
その中でも、学芸みらい社の小島直人社長には編集者として膨大な作業をもって助けて頂きました。
このシリーズは、小島社長との二人三脚で作り上げた〝作品〟だと思っています。









