講座602 教師は「叱れない」ままでいいのか?

これは昨夜、YouTubeにアップした動画です。
今回は先にYouTubeにアップしました。
学校の先生方に早くお見せしたかったからです。
どんな内容なのかをこちらの記事で書きます。
2.クレームの問題
3.反省できない子供たち
4.問題は相関している
5.叱る(懲戒)という行為のボトルネック
6.RP(修復的実践)を実装する
7.おまけ

1.「叱らない」と「叱れない」

吉田高志先生が、全国413名の教師のアンケート結果をYouTubeにアップされました。
これが興味深い質問なのです!

結果も驚きですよね。
「叱らない」のではなく「叱れない」が多いのです。
私は常々、師である向山洋一先生から「叱っちゃ駄目だ」と教わって来ました。
かなり守っていたと思います。
どのくらい守っていたかと言いますと、叱るのは一年に三回くらいといった感じです。
絶好調の時期は一年に一回だけでした(その「一回」は意識的に叱りました)。
ですから、このアンケートで言えば「27%」の「叱らない」教師です。
でも、この場合の「叱る」は本当に〈心から叱る〉わけですから、かなり感情も入っていたと思います。
それとは違って、子供たちに〈気づかせる〉ような小さな指導は頻繁にあったと思います。
特に、低学年の時は多かったですね。一日100回〈気づかせて〉いたかも知れません。(笑)
話を戻します。
今回の話題は、最近の先生方は「叱れない」が多いということです。
これがまず、びっくりしました。
私はてっきり、〈最近の先生は〝優しさ志向〟だから叱らない〉のかと思っていたのです。
でも、「叱らない」のではなく「叱れない」のですね。

2.クレームの問題
では、どうして「叱れない」のでしょう。
アンケートを見てみましょう。

予想通り「保護者からのクレーム」が出て来ました。
しかも、ドラマのような〝お手本回答〟です。
内容に関係なく「叱った」というだけでクレームが来ることがある。
これです。先生方を困らせているのは。
これで学校は〝守り〟に入るわけです。
果たしてそれが我が子にとっていいことなのでしょうか?
そのほかの子供たちにとってはどうなのでしょう?
一部の保護者がクレームを出すことで、学校に通うすべての子供たちが〈叱られなくなる〉のは、いいことなのでしょうか?
これは二通りの意見に分かれると思います。
教師が適切な叱り方をしてくれるなら、叱ってもらった方がいいと思います。
でも、不適切な叱り方をする先生なら、叱って欲しくないでしょう。
つまり、教師の叱り方次第というわけです。

3.反省できない子供たち

先程のは「クレームの問題」でした。
次は、一番下の回答を見てみましょう。これも現場で多く見られます。
・叱られている最中に不貞腐れる
・叱られた直後に他の友達の所へ行って「あいつうぜえ」と言う
・反省も改善もしないので同じ事のくり返し
こうした子は増えているのかもしれません。
ただし、ここも意見は二つに分かれます。
教師の叱り方が不適切なために子供が反省しないのか?
叱り方は適切なのに子供が反省しないのか?
二通りあるのですが、話を進めるためにここでは後者を取り上げることにします。
つまり、〈叱り方は適切なのに子供が反省しない〉という場合です。
これについて、この先生は「叱られ方」の問題であるとおっしゃっていますが、私は「発達の問題」だと考えます。
つまり、「反省しない」のではなく「反省できない」という問題です。
そしてこの問題は、先に述べた「クレームの問題」と関係しています。


4.問題は相関している
どういうことかと言いますと、
保護者からのクレームによって、学校が〝守り〟に入ると、教師は叱りたくても「叱れなく」なります。
〈叱りたくても叱れない〉というのは、本当なら叱るべき場面なのに〈その指導〉をしないということです。
〈その指導〉とは何でしょう。
〈叱られる〉という経験です。
〈叱られる〉という経験の少ない子が増えてしまうということです。
これが発達に影響します。
〈叱る〉という行為には、次の四つが含まれます。

叱られた子供は、その度に「なぜいけないのか」「どうすればいいのか」を知ったり、考えたりします。
そして、実際に「修復行動(「ごめんね」を言うなど)」をしてトラブルを乗り越えます。
子供は叱られることによって、学び、乗り越え、自信を持ちます。
その機会が少なるわけですから、発達に影響を及ぼすわけです。

5.叱る(懲戒)という行為のボトルネック
意見はあると思いますが、ここまでのことは理解していただけるのではないでしょうか。
話を進めます。
悪いことをしたら → 叱る
このことを法律の問題を考えてみたいと思います。

「体罰」は禁止されてます。学校教育法第 11 条です。
このことは、教師にも保護者にも認識されていると思います。
次に、「懲戒」です。
懲戒には、「退学」「停学」「訓告」「事実行為としての懲戒」があります。
この中で、〈叱る〉という行為は「事実行為としての懲戒」です。
これは法的に認められています。教師の懲戒権です。
この二つだけだと、(問題もあるのですが)話は複雑ではありません。
話が複雑になるのは、ここにもう一つのキーワードが出て来るからです。
それが「不適切な指導」です。
「不適切な指導」は禁止事項です。
なぜならば、公務員としての信用を失墜させる行為であり、職務義務違反として懲戒処分の対象になり得るからです。
また、自治体ごとに「不適切な指導」に対するガイドラインを作成している場合が多く、ガイドラインであっても公的な文書ですから、それに反すると職務義務違反が成り立ちます。
ですから、クレームというのは大きな影響力を持つことになります。
教師が「叱れない」背景には、こうのような問題があります。

6.RP(修復的実践)を実装する
そこで、私が動画で提案したのがこれです。

年度はじめに、PTA総会などで保護者からも合意を得て、学校便りなどで校長名でこのような文書を発出することです。
本校では、子どもの人格を傷つける叱責は行いません。
これは誰もが納得するはずです。
そして、
一方、安全や他者の権利を守るために必要な場合には、その場で行動を止め、なぜいけないのか、どうすればよいのかを指導します。
と学校の立場を明確に示すわけです。
この「安全や他者の権利を守るために必要な場合には」というのは、命や怪我の恐れがある事態や、他の子の心を傷つける場合などがそれに当たるでしょう。
この断りも納得できると思います。
そして、その場合には、
その場で行動を止め、なぜいけないのか、どうすればよいのかを指導します。
これが【RP】Restorative Practices(修復的実践)です。

詳しくは、講座599「2030年 どうなる?日本の教育最終回」で解説しました。
そして、こうしたことを学校便りなどで発出するだけではなく、学校の経営計画や教育課程などに位置付けておくことで、より明確に学校の方針として公的責任を公開していることになります。
あとは、教師個人がそのスキルを持つだけです。
動画では、そのスキルを発段階ごとに「幼児期の叱り方」「小学校低学年での叱り方」「高学年での叱り方」「中学生の叱り方」に分けて解説しました。
ここでは、そのスライドだけを並べておきます(動画を再生することでスライドの解説部分から視聴できるように設定しました)。





7.おまけ
アンケートには、「若手の先生たちは、叱り方を知らない」ので〈叱れない〉のではないかという回答がありました。

それでしたら是非、この本を読んでみてください。
また、そんなことを言っても「不適切な指導」をしてしまう教師が実際にいるではないか!という不満をお持ちの方は、こちらの新著を読んでみてください。
どうして「不適切な指導」をしてしまう教師がいるのかについて解説しています。










