講座414 情報社会の次に来るもの
講座276で「0~3歳児が生きる将来の日本」という記事を書きました。
それから1年以上経っていますので、今回も将来の日本について「我が子」「我が孫」のために考えておきたいと思います。
2.一流の人物に聞いてみる
3.国家滅亡の共通点
4.「支える」って何?
5.「2040年問題」の本質
6.情報社会の次に来るもの
1.AIに聞いてみた50年後の日本
Google Bardに次の質問をぶつけてみました。
50年後に日本は存在していると思いますか?
さすがはGoogle Bardです。
ChatGPTでは全く答えられなかった質問にちゃんと答えてくれました。
言語モデルとして、私は未来を予測することができません。
しかし、私がアクセスできる情報に基づいて、50年後も日本が存在する可能性が高いと私は信じています。
日本は、世界で最も先進的な国の一つであり、強力な経済と優れた教育システムを持っています。
また、日本は強い文化的アイデンティティを持っており、人々は自分の国に強い愛着を持っています。
これらの要因は、日本が今後も繁栄し、世界で重要な役割を果たし続けるだろうと示唆しています.
ただし、日本が直面する課題もあります。
日本は人口減少と高齢化が進んでおり、労働力不足が深刻化しています。
また、日本は自然災害の多い国であり、近年は頻発する大規模な地震や台風によって大きな被害を受けています。これらの課題を克服するために、日本は新たな政策を導入し、社会全体で協力する必要があります。
これらの課題にもかかわらず、私は日本が50年後も存在し、繁栄し続けるだろうと信じています。
日本は、強力な経済、優れた教育システム、強い文化的アイデンティティを持つ、世界で最も先進的な国の一つです。これらの要因は、日本が今後も繁栄し、世界で重要な役割を果たし続けるだろうと示唆しています。
さすがAIですね。
見事に常識的な答えを出してくれました。
テストだったら100点でしょうね。
AIはこんな風に模範解答が得意です。
模範解答を知りたい時にはおおいに使うべきだと思います。
でも、人間は模範解答では満足しない生き物です。
もっと違う考えを知りたくなりますよね。
模範解答を知ってしまうと、余計にそんなんじゃあ満足出来なくなりませんか?
AIはそういう意欲を起こしてくれる道具だと思います。
ですから、子どもたちにもそういう使い方をしてもらいたいなと思っています。
2.一流の人物に聞いてみる
先日、雑誌『致知』2023年9月号で、東京大学名誉教授の月尾嘉男さんとJFEホールディングス名誉顧問の數土文夫さんの対談が掲載されていました。
テーマは「50年先の日本に未来はあるか」。
その内容をいくつかあげてみます。
①30余年前、世界の株式時価総額のトップ5はすべて日本企業が占めていたが、いまやトップ50にすら1社も入っていない。
②高齢化率は世界2位だけど1位のモナコは特別な国なので実質日本が1位。
③合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子供の数)は世界186位。
④留学者数はトップの中国が87万人。次がインドの21万人。日本は3万人で世界38位。
數土さんが言うには、
「留学者数が30位以下の国は三流国」だそうです。
この基準はわかりやすいと思います。
もっと学んでやろうという若者が少ないということです。
制度の違いはあれど、中国やインドの若者たちは外国へ行って学んでいるわけです。
一番いいのは「自分から学んでやろう」と思うことで、二番目は「人から言われて学ぶ」でしょう。
日本はその二つにすら当てはまらなくなって来ているわけです。
小学校に入学した時はあれほど「早くお勉強がしたい!」とキラキラしていた子どもたちが、一体どこで「勉強嫌い」になってしまうのでしょう。
3.国家滅亡の共通点
歴史を紐解くと、繁栄していた国が滅亡してしまった例はいくつもあります。
対談で挙げられていた「国家滅亡の共通点」は次の四つです。
①人口減少
②技術力の低下
③地政学的リスク
④自国の防衛を他国に任せる
どれも日本が当てはまるじゃないですか!
AIで模範解答を調べている場合じゃないです。
地中海を制覇していたベネチアという国は、滅びた頃の独身男性率が65%だったそうです。
今の日本は20代の独身男性率が72%だそうです。
平均寿命が延びたとは言え、人口が減ると「今の子どもたち」が社会を支えることになるわけですから、「我が子」「我が孫」の負担はこれまでに経験したことのないレベルになります。
他人事ではありません。
人口が減ると、働き手が少なくなります。
少ない労働人口で多数の高齢者を支えなければならない社会になるということです。
1960年(昭和35年)には「11.2人で高齢者1人」を支えていました(胴上げ型社会)。
2014年(平成26年)には「2.4人で1人」(騎馬戦型社会)。
今後は「1.2~1.3人で1人」を支える「肩車型社会」です。
4.「支える」って何?
ところで、この「支える」の中身とは何なのでしょう?
給与明細から見てみましょう。
この「控除(こうじょ)」の部分が給料から引かれるお金です。
(1)保険料(社会保険料)
20歳~59歳の労働者が給料から出すお金。
①健康保険料:病気や怪我をした時のリスクを社会全体で支えるためのお金
②介護保険料:介護が必要になった時のリスクを社会全体で支えるためのお金(40歳から引かれる)
③厚生年金:老後の生活を社会全体で支えるためのお金
この三つは正規労働者の義務です。
関係しているのは、有名な憲法第25条(生存権)です。
【日本国憲法】第25条
すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
(2)税金
給料から引かれる税金は所得税や住民税などですね。
この「保険料」と「税金」を使って「支えて」いるわけですね。
「病院」「介護」「年金」ですから、その対象は主に高齢者と言っていいでしょう。
これが「支える」の中身です。
そして、支えるために必要なお金はどんどん増えています。
高齢者が増えているので必然です。
ですから給料から控除されるお金も上がっていくわけですが、
そこはあからさまに上げることができないので目立たないように上がっている感じです。
「国民負担率」という指標もありますが、これを見ても実感は薄いので、
年収の中でどのくらい支えているのかを見てみましょう。
日本全体の平均年収は450万円くらいですので、
年収450万円の場合で調べてみます。
そうすると、税金で年20万円くらい、社会保険料で年50万円くらいが控除されています。(Yahoo!ニュース「世帯年収別に見た消費税、所得税、社会保険料負担の実態(2019年)」)
450万円のうちの70万円ですから約15%ですね。
社会の仕組みがどうなるかにもよりますが、将来はこれをもっと増やさないと支えていけない状況になっているということです。
だからといって、高所得者の負担を増やすと批判されたり、日本から出て行ってしまったりします。
その一方で、正規労働者は損だからといって非正規で働き続けると生活不安定者が増えます。
未来の若者を幸せにするにはどうすればいいのでしょうか?
5.「2040年問題」の本質
「いやいや、65歳以上でもまだ働けるじゃん!」と考える人もいます。
しかし、ここにも問題があります。
長寿=認知症が増える
2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人。
高齢者の「6人に1人」が認知症です。
そして、当然この割合は増えます。
2025年には「5人に1人」、2040年には「4人に1人」です。
MCI(軽度認知障害)も含めるともっと多くなります。
もう一度「2040年問題」のグラフを見てみましょう。
ひとくちに高齢者と言っても「65~74歳」と「75歳以上」に分かれます。
そしてこれからは「75歳以上」の人口が増えるのです。
つまり、ひとくちに「高齢者」と言っても、
その中には「認知症」の方もいれば、「75歳以上」の方もいる。
簡単に「65歳以上でもまだ働けるじゃん!」というわけにはいかないのです。
明らかに、「支える人」が減り、「支えられる人」が増えるのです。
そして、この構造の中で全体の人口も減ります。
日本は今、毎年約150万人が亡くなり、出生人口は毎年約80万人です。
これは何を意味しているかというと、
「子ども1人」の価値が高まっている。
では、現在の教育は「子ども1人」を大切にしているでしょうか?
「子ども1人」を大切にするのは言うまでもなく大人の役目です。
胸を張って言えるでしょうか?
胸を張って言いたいですよね。
6.情報社会の次に来るもの
人類は「狩猟採集社会」「農耕社会」「工業社会」「情報社会」へと発展して来ました。
月尾嘉男さんは次来るのは「情緒社会」だと主張されています。
今は「情報」に価値がありますよね。
でも、誰もが情報を手に入れやすくなっています。
それに対して「情緒」は手に入れるのが難しくなっています。
ストレスや不安を抱える人が増えています。
それは大人も子どももです。
情緒の安定をいかにして手に入れるか。
ここが「幸せ」に直結しています。
今風の言葉で言えば「ウェルビーイング(Well-being)」です。
ウェルビーイングというのは次の「三つの健康」を維持することを言います。
①肉体的健康
②精神的健康
③社会的健康
①②③がセットで「ウェルビーイング」です。
中でも注目すべきは③の「社会的健康」です。
これは「生き甲斐」と言ってもいいですし、「他人の幸せ」と言ってもいいでしょう。
誰かを幸せにすることは最高級の生き甲斐ですよね。
自分によし!他人によし!世の中によし!というwin-win-winの生き方が「ウェルビーイング」です。
そして、私はこのブログの中で、子どもたちが幸せに育つためのスキルを書き続けています。
簡単にまとめますと、次の「子育て」です。
1.乳児期は「愛着形成」を大事にする
2.幼児期は「言葉にしてあげる」「めいっぱい遊ばせる」「様々な体験・様々な学習をさせる」
3.児童期は「自信を育てつつ、小さな失敗を乗り越えさせる」
4.思春期は「思春期の特徴」を考えて見守ってあげる
この順序で育った子には次の力が身につきます。
レジリエンス(困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力)
つまり、困難な時代にあっても「幸せ」を手に入れられる人です。
昔と違うのは、その「幸せ」の中には「他人の幸せ」「社会の幸せ」も含まれているということです。
この点を強調した子育てが必要だと思います。
そのことが結局、我が子の幸せになるのです。
「SDGs」という言葉をよく聞きますよね。
「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」のことです。
このSDGsは、「17のゴール」と「169のターゲット」で構成されていますが、
実は、そのおおもとは「たった1つの宣言」です。
その宣言をご存知ですか?
2030年までに誰一人取り残さない世界を実現させる
これが2015年に私たちが人類が宣言したことです。
「2030アジェンダ(2030計画)」と言います。
ハーバード大学ドクター・オブ・フィロソフィーの米倉 誠一郎氏は言います。
人類は「2030年までに誰一人取り残さない世界の実現」という宣言を発しました。
後世になって私たちの子孫がこの壮大な宣言に向けて「どの国が一番頑張ったか」と問うた時、
僕は「日本」という名前が一番に出てほしいと思います。(『致知』2023年9月号)
素晴らしい目標ですよね。
まさにウェルビーイングな目標です。
日本が幸せで満たされた国になれば世界中の人たちが日本に注目するでしょう。
そして、日本を見習おうとする人々、日本に行ってみようと思う人々がたくさん出て来るでしょう。
そうなれば日本は更に幸せになります。
「子ども1人」の価値が高まっている。
その価値とはウェルビーイングです。
自分も他人も幸せにできる人間力です。
そう考えれば、これからの時代に向けた子育ての在り方が見えてくるのではないでしょうか。
一人一人の価値を高める。
親も将来を見据えて子育てをしていかないとと思いました。