講座558 「赤ちゃん学」6000名突破!

出前授業「赤ちゃん学」の受講者が6000名を突破しました!
年度末の時期に授業をしてくださる学校が毎年多いようです。
目標の1万名まで地道に続けます。
先日は、東京都の豊島区立西巣鴨中学校の生徒さんたちから感想が届きました。
代表してYさんの感想を紹介させていただきます。
初めて知れた情報がたくさんあっておもしろかった。
むずかしい問題もあったけど、周りの人と話し合う時間があったので、授業に取り組みやすかった。赤ちゃんの能力や愛着形成について興味が深まりおもしろかった。
問題6で二人ペアになって実際に演じてみるのがおもしろかったし、それぞれ少しずつ違うところがあったのを調べることができてよかった。(中2女子Yさん)
Yさんの感想には授業の特徴がギュッと詰まっています。
一つずつ解説していきますね。
2.なぜ「おもしろかった」のか
3.愛着形成に関する社会の実態
4.中高生はコミュニケーションを求めている

1.〈学校では習わない〉という事実
まず、「初めて知れた(知ることができた)情報」という言葉です。
これは、〈赤ちゃんに関する情報は中学二年の段階では学校では習わない〉という事実を意味しています。
ではいつ習うのか?
残念ながら現行制度では中学でも高校でも習いません。
では誰が教えてくれるのか?
親と離れて暮らす場合も多いですし、親であっても正しい育て方を知っている方は減少して来ています。
だからスマホで?
ネット上の情報はバラバラ過ぎてかえってどれが正しいのか分からなくなるケースが多いです。
たまたま見た情報を〈鵜呑み〉にしてしまうこともあるでしょう。
じゃあAIは?
AIはかなり適切な(常識的な)情報を出してくれます。
乱雑に散らばっているインターネット状の情報を整理してくれるという点では優れています。
私としては、かなりオススメできます。
ただ、AIにも弱点はあります。
AI自身に聞いてみましょう。

メリット(AIで調べる強み)
- 24時間いつでも相談できる
- 夜間授乳や寝かしつけの最中でも、思い立った瞬間に聞ける。
- 「いま起きている状況」を文章で整理するだけでも、頭の中が落ち着くことがある。
- 状況に合わせて“カスタマイズされた答え”が得られる
- 月齢、授乳(母乳/ミルク/混合)、睡眠、家族構成、住環境など条件を入れると、一般論より具体的な提案になりやすい。
- 「選択肢の比較(A案/B案)」や「手順化(1→2→3)」が得意。
- 情報の要約・整理が速い
- 長い記事やガイドラインを短くまとめたり、「結局やることは何?」に落とし込める。
- “正解探し”ではなく“優先順位づけ”に使うと効果的。
- 言いにくい悩みも言語化しやすい
- 産後の不安、イライラ、孤独感なども、まずは言葉にして吐き出せる。
- 「こういうときどう言えばいい?(パートナー/祖父母への伝え方)」みたいな対人コミュニケーションにも強い。
- 地域の窓口・受診目安の整理に役立つ
- 「この症状なら緊急性は?」のような一般的な判断軸(危険サイン)を整理して、受診・相談の準備ができる
※ただし最終判断は医療機関・自治体窓口へ(ここはAIの限界)
これらはだいだいその通りだなと思えますね。
大事なのは「デメリット」の方です。
デメリット(落とし穴)
- もっともらしい誤情報が混ざる
- AIは文章を上手に作れるので、根拠の弱い内容でも“それっぽく”見えてしまう。
- 特に「医学・発達・安全」に関わる部分は、出典の確認が必須。
- “赤ちゃんの個性”が抜け落ちやすい
- 同じ月齢でも、気質・体重増加・生活リズム・既往歴で対応は変わる。
- AIは現物を診られないので、微妙な違い(顔色、呼吸、脱水のサインなど)を評価できない。
- 情報量が増えて不安が増幅する(検索地獄)
- 眠れない → 調べる → さらに不安 → もっと調べる、になりがち。
- 特にSNS的な“極端な育児論”を混ぜて学習すると、正解が分からなくなる。
- “一発で最適解”を求めるほど外しやすい
- 育児は「安全確保+試行錯誤+小さな改善」が基本。
- AIに“正しい方法”を求めると、うまくいかない時に「自分が悪い」になりやすい。
- 緊急サインを見落とすリスク
- たとえば「ぐったり」「呼吸が苦しそう」「けいれん」「血便」「強い脱水」「高熱で反応が悪い」などは、AIで様子見を続けるのが危険なことがある。
- AIの提案が“受診の遅れ”につながる可能性がある。
- プライバシー面の注意
- 赤ちゃんの健康情報や家族の状況など、詳細に書くほど便利だが個人情報の扱いには慎重さが必要。
どれも大切な〈構え〉です。
AIを使う時にはこのような〈構え〉がとても重要になります。
これらのメリットとデメリットを整理すると次のようになります。
うまい使い方(安全にメリットだけ取りに行くコツ)
- AIは「診断」ではなく「整理・選択肢・質問づくり」に使う
- 例:「小児科に行くなら何をメモしておくべき?」
- 例:「授乳・睡眠の記録を見て、改善仮説を3つ出して」
- 出典が必要なテーマは“根拠をセットで要求”
- 例:「安全な寝かせ方は、公的機関の推奨に基づいて要点だけ教えて」
- “不安が増えたら一旦やめる”ルールを作る
- 調べる時間を区切る(10分だけ、など)。
- 相談先の優先順位を決めておく
- 緊急→救急/小児救急相談
- 迷う→かかりつけ/健診窓口/助産師
- 工夫→AIで案出し
これまた上手なまとめですね。
(1)AIは「診断」ではなく「整理・選択肢・質問づくり」に使う
現在のAIは「生成AI」なんです。何かを作るAIです。
万能人工知能(AGI)はまだ開発されていません。
ですから診断には用いずに、作ることを目的にしておくと一応安全です。
(2)出典が必要なテーマは“根拠をセットで要求”
その上で、正しいかどうかを知りたい場合は「一次情報(原典)」に当たることです。
公的な機関が公開している情報なら一応信頼できます。
(3)“不安が増えたら一旦やめる”ルールを作る
AIには〈依存〉という罠があります。
使い過ぎにならないように工夫が必要です。
(4)相談先の優先順位を決めておく
やっぱり「人」が優先上位です。
AIは下位という使い方です。

2.なぜ「おもしろかった」のか
Yさんの感想には「おもしろかった」が三回も出て来ます。
なぜおもしろかったのか?
要素は三つあります。
(1)興味の湧く内容だったこと(知識)
(2)楽しくなる工夫があったこと(組み立て)
(3)楽しい授業だったこと(授業力)
「赤ちゃん学」という授業は中高生(中2~高3)の生徒の発達段階を考えて、彼らが興味を抱く内容を扱っています。
いわゆる「思春期」が「親性準備性」の敏感期だという理論に基づいて、年齢にフィットすることを前提にしているので、多くの生徒が自然に興味を持つはずです。
これは生物学的・人類学的な見地から作った授業であり、教科書には載っていません。
でも、〈教科書の内容〉だけが学校教育の内容であるべきだとは言えません。
教科書に書かれていないことであっても、教育上大切な情報はあるはずです。
「赤ちゃん学」は〈①生徒が本能的に求める内容〉と〈②社会的に求められている内容〉という二つを判断基準に作りました。
ですから、これまで実施した6000名以上の中の感想の多くに「今知れてよかった」というような感想がたくさん書かれれるのだと確信しています。
(2)の「楽しくなる工夫」については書いたら長くなるので省略します。
(3)の「授業力」については、生徒の感想を拝見すると感じることができます。
Yさんの感想のように「おもしろかった」が三回も出てくるということは、授業全体がずっと楽しい流れで続いたことを物がったいると思います。
そこは授業を運営する力量が発揮される部分ですので、授業者の先生が上手に授業をされたのだと思います。

3.愛着形成に関する社会の実態
Yさんの感想だけでなく、今回いただいた感想の多くに書かれていた言葉が「愛着形成」でした。
何人もの生徒が書いていました。
これは「赤ちゃん学」のキーワードです。
最も重要な言葉です。
こども家庭庁の委託調査「妊婦や乳幼児とその保護者を取り巻く生活実態調査」(令和7年)に興味深い結果があります。
あなたは、「アタッチメント(愛着)」について聞いたことがありますか。(妊婦)
なんと妊婦さんでさえ役半分の人が「聞いたことがない」のです。
学校で教えられていないので当然と言えば当然の結果です。
だからこそ「赤ちゃん学」が必要なわけですが、
ただし、人間には赤ちゃんを育てる本能が遺伝子に組み込まれているので、言葉や方法を知らなくても〈なんとかなる〉ものです。
でも、〈なんとかならない〉場合もあるのです。
それは、時代が変化しているからです。
私たちの遺伝子に組み込まれている本能的な能力の多くは数十万年前の狩猟採集時代に持っていたものです。
その頃の社会と今の時代は全く違います。
スマホがあったり、幸せの価値観が違ったり、誘惑が多かったり、男女の社会的役割が違ったり、様々な点で狩猟採集時代とは異なります。
こんな社会になったのは、ごく最近(ここ数十年)のことで、今の社会環境に適応するための情報はまだ遺伝子に刻まれていません。
環境に適応するための情報が遺伝子に組み込まれるためには2万年以上の歳月が必要だと言われます。
最近のヒトの環境変化は急激過ぎるのです。
ヒト以外の生物は遺伝情報を中心に環境適応し続けていますが、ヒトはそれだけではこの変化についていけなくなる可能性があります(絶滅する可能性もあります)。
ただし、ヒトには学習する能力があるので、そこが重要なわけです。
そして、その学習は変化に合わせて行わなければ生き残れません。
環境が変化しているのに、いつまでも同じことを学習しているようでは危険です。
中学生が授業中に机に突っ伏したまま授業を受けるのは学習がツマラナイからかも知れません。
高校生が授業中にスマホをいじっていても教師は「妨害していないからいいか」と思うのは先生自身も学習内容に価値を見出せていないのかも知れません(教え方によっては価値は変わりますが)。
「赤ちゃん学」は教科書にはありませんが、〈核家族〉という時代の変化に合わせた学習内容です。
あなたは、「アタッチメント(愛着)」について聞いたことがありますか。(妊婦)

これは年収による違いです。
予想通り、年収が高い家庭ほど「聞いたことがある」が高くなっています。
しかし、それでも63.5%です。
年収が低い家庭では約6割の人が「聞いたことがない」わけです。
私はこれを100%「聞いたことがある」にしたいと思って今の活動を始めました。
学習指導要領に定めれば可能です。
97%の国民が高等教育を受けていますから、高校の家庭科の教科書に3時間程度でもいいので扱うようになれば生徒は興味を持つと思います。
そうなれば、あとは問題は授業のやり方ですね。

4.中高生はコミュニケーションを求めている
Yさんは書いています。
問題6で二人ペアになって実際に演じてみるのがおもしろかったし、それぞれ少しずつ違うところがあったのを調べることができてよかった。
私も何度か高校生相手の授業をしましたが、はっきり言って、
座学は面白くない!
のです。
座ったままの講義形式の授業です。
「赤ちゃん学」には〈近くの人と相談〉とか〈ロールプレイング〉などがあります。
これがあると授業の雰囲気はガラッと変わります。
その様子を見て私は思いました。
中高生はコミュニケーションを求めている。
テストのために知識を暗記する授業は時代の要請ではありません。
そのような知識ならAIを使えば整理してくれます。
中高生が求めている授業は〈暗記〉ではないのです。
今年度「赤ちゃん学」を実施して下さった学校です。
毎年実施してくださる学校も出て来ました!
内容は少しずつ変えています(時代の変化に合わせて)。
2026年版「赤ちゃん学」は既に完成しております。
広めていただけましたら嬉しいです。
■出前授業「赤ちゃん学」
基本対象:中2~高1(それ以外でもお申し込みできます)





