本の紹介

『子ども虐待』

投稿日:2020年5月8日 更新日:

今回ご紹介するのは、西澤哲先生の『子ども虐待』(講談社現代新書)2010年です。折り目33カ所。

西澤先生と言えば虐待やPTSD関係の第一人者です。何冊か読んでいますがどの本にも学びがあります。虐待をテーマにする時は必ず読むべき本です。

虐待のメカニズムは様々ありますが、代表的な次の一文を抜粋しましょう。

その考え方で言えば、身体的虐待は、子どもを殴ってでも子どもに言うことをきかせることによって、「自分は親として有能である」という「確信」を得る行為である。(33ページ)

つまり、親としての自信の無さが虐待の背景にあるのは明らかです。あるいは、「親として」だけではなくて、「夫として」「人間として」自分に自信がないのかも知れませんが、その背景をこのようにシンプルに定義することによって、虐待に関する問題は前進しやすくなります。

虐待は社会問題ですから議論するだけでなく解決しなければならない問題です。私はどうしてもその立場から読んでしまうので、こうした西澤先生の定義の仕方がとても好きです。

くり返しになりますが、「自分は親として有能である」という確信を得たいのは、確信がないからです。ですから、その原因を探り、原因を取り除くことが社会的な解決に向かう道筋です。

どうして確信がないのでしょう。原因は二つあります。

一つはスキルの問題です。親になるための教育が社会から抜け落ちているからです。核家族、シングル、学校の教育課程、福祉制度などが関わる問題です。

もう一つは人間教育の問題です。自己有能感を保障するシステムが日本の教育制度に欠落しているからです。家庭教育も学校教育も格差を生むシステムに成り下がっています。学習方法が変わっても、学習内容が変わっていません。「学校で習ったことは大人になっても役に立たない」と感じている国民は多数いるでしょう。承認欲求も自己実現欲求も満たされていない層がある限り、虐待はなくならないでしょう。

この二つの原因に手をつけない限り「負の連鎖」は続きます。

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