講座14 「核のごみ」は何シーベルトか?
北海道の寿都町と神恵内村が「核のごみ」で騒がれた。
この報道に数値がさっぱり出て来ない。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
単純にそう思った。
原発については賛成もあれば反対もある。
それはわかるが、それは置いといて、単純に、数値を知りたいと思った。
その数値をネット検索で調べることはできるか。
そこが今回のミッションである。
調べた過程を整理してみる。
【Word1】「高レベル放射性廃棄物」
「核のごみ」と言われている物体の名称は「高レベル放射性廃棄物」である。
まずは、このワードで「検索」をかける。
Wikipediaを筆頭に約922,000件が0.34秒でヒットする。
北海道電力から「開いて」みる。
「説明文」がある。
「読んで」みる。
「高レベル放射性廃棄物の処理・処分方法」
再処理工場において、原子力発電所で使い終わった燃料(使用済燃料)から再利用できるウランやプルトニウムを回収すると、核分裂生成物を含む放射能レベルの高い廃液が残ります。この廃液は溶かしたガラスと混ぜ合わせ、固めて「ガラス固化体」にします。これを「高レベル放射性廃棄物」といいます。ガラスは水に溶けにくく、化学的に安定しているため、放射性物質を長期間閉じ込めることに優れています。ガラス固化体は、青森県六ヶ所村の貯蔵施設で30~50年間貯蔵し、冷却します。その後、最終処分場で、放射能レベルが十分に低下するまで、人間の生活環境から長期間にわたり隔離するため、地下深くの安定した地層中(岩盤)へ処分することとなっています。(図01)
文章も「長い」し、「図」も情報量が多い。
作業記憶が追いつかない。
大切と思われる部分を「抜き出して」みる。
これを「高レベル放射性廃棄物」といいます。
「これ」とは何か。
「ガラス固化体」のことである。
【Word2】「ガラス固化体」
このワードで検索してみた。
ニューモに次の図がある。(図02)
https://www.numo.or.jp/q_and_a/faq/faq100005.html
廃液をガラスと合わせて固めた図だ。
これはすぐに図読できる。
ステンレス製の「デカイ水筒」みたいだ。
高さ約1.3m、直径約40cm。
これが再処理過程で出て来るわけだ。
しかし、まだ放射線量が不明だ。
【Word3】「ガラス固化体」and「放射線量」
これで検索すると出て来る。
ガラス固化体1本当たりの放射能は、製造直後は約2万テラベクレル(※)と非常に高いですが、厚さ1.5メートル程度のコンクリート壁で放射線を遮へいすることにより、人体に及ぼす影響を十分に小さくすることができます。現在、青森県六ヶ所村において、日本原燃㈱が適切に保管しているところです。
https://www.numo.or.jp/q_and_a/faq/faq100105.html
「約2万テラベクレル」とある。
一体どんな線量なのだろう?
皆目見当がつかない。
「※印」を読む。
(※)テラベクレル:ベクレルは、放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数(放射能)を表す単位。テラベクレルは1兆ベクレル。
読んでも分からない。
何だか「凄い印象」だけが残る。
ちなみに、ベクレルについての説明は、
文科省の「小学生のための放射線副読本」の8ページに
1カ所だけある。
ベクレルは放射性物質が放射線を出す能力(放射能)の大きさを表す単位で、大きいほど、たくさんの放射線が出ていることを意味します。「放射線副読本」(平成30年10月改訂)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/attach/1409776.htm
何だこれは?
「大きいほど大きい」というだけの説明である。
しかも、ベクレルは「線量」ではなく「能力」を表す単位だった。
【Word4】「ベクレル」
「ベクレル」だけを調べる。
東京電力のサイトに「ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)の換算例」が出ていた。
例として、「100ベクレル/kgの放射性セシウム137が検出された飲食物を1kg食べた場合の人体への影響の大きさ」というのが出ている。
難解である。
換算するための係数は放射性セシウム134で1.9×10-5、放射性セシウム137で1.3×10-5になる。
という。
換算はできるようだ。
しかし、全くイメージできない。
このままでは「約2万テラベクレル」の正体は不明のままである。
ワードを変える。
【Word5】「青森県六ヶ所村」and「貯蔵施設」
発想の転換=「ワードの変更」だ。
この検索なら「ガラス固化体」が出てくるはずだ。
検索する。
しかし、なかなか難しい。
再び、「ワードの変更」をする。
【Word6】「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター」
今度は「正式名称」で調べてみた。
画像検索で「手がかり」らしき写真を見つけた。
「手がかり」というのが大事である。
「手がかり」という言葉を使うということは、
「解決したい疑問がある」、ということである。
疑問を解きたいのだ。
疑問とは次のことだ。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
この疑問が頭の中に「あって」の検索である。
「手がかり」らしき写真は次のものだった。
ガラス固化体の上に人が立っている(図03)
普通に人が立っている。しかも若い女性らしい。
「約2万テラベクレル」というのはそんなものなのか?
それともフェイク(管理を始める前の写真)なのか?
説明がある。
ガラス固化体は、直径が約40cm、高さが約1.3mの筒型で、総重量は約500kgです。製造直後は、表面の放射線量が1,500,000mSv/hと非常に高い値になります。これをオーバーパックという厚さ約20cmの金属容器に包み、50年が経過すると、放射線量はオーバーパックの表面で2.7mSv/h、1m離れれば0.37mSv/hまで低下します。さらに、オーバーパックに包まれた状態で1000年が経過すると、表面で0.15mSv/h、1m離れた場所では0.02mSv/hまで低下します。参考までに、胸のX線検診1回で受ける放射線量は0.06mSvです。資源エネルギー庁「放射性廃棄物の適切な処分の実現に向けて」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/final_disposal.html
長い。
大切な部分を抜き出す。
製造直後は、表面の放射線量が1,500,000mSv/h
「150万ミリシーベルト」と読む。
「読み方」も大切な学力なのだと実感。
これが「高レベル放射性廃棄物」の放射線量である。
ただし、「製造直後は」、とある。
「50年後」は違ってくる。
放射線量はオーバーパックの表面で2.7mSv/h、1m離れれば0.37mSv/hまで低下します。
あの女性が立っているガラス固化体の線量は?
慌ててはいけない。
冷静さも大切だ。
立ち止まって整理しておこう。
製造直後→150万ミリシーベルト
50年後→0.37~2.7ミリシーベルト(オーバーパック)
また新しいワードが出て来た。
【Word7】「オーバーパック」
これはすぐに検索できた。(図04)
ガラス固化体はオーバーパック(金属製の容器)に封入し、地下水との接触を防ぎます。オーバーパックの設計寿命は埋設後1,000年と設定しています。
https://www.numo.or.jp/q_and_a/faq/faq100075.html
しかし、話が飛んでいる。
この説明は「埋設」に関するものだ。
六ヶ所村の話、ではない。
危うく勘違いしそうになった。
教訓。
頭の中に絶えず「問題」を置いておかねば間違う可能性がある。
確認しておこう。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
「製造直後は」150万ミリシーベルトだと分かった。
そして、写真は50年後の「オーバーパック」状態でもない。
つまり、問題はまだ解決されていないということだ。
【Word8】(戻る)
資源エネルギー庁の説明(女性が立っているガラス固化体の説明)に戻る。
この「戻る」という作業も重要だ。
(続き)ガラス固化体は安定した物質で、それ自体に爆発性はなく、放射性物質が核分裂を起こして大きなエネルギーを発生する「臨界」を起こすこともありません。ガラス固化体からは、前述のとおり強い放射線が出ますが、約2mのコンクリートがあれば遮蔽できるため、安全に管理することが可能です。実際に、青森県六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センター(日本原燃株式会社)では、ガラス固化体が安全に貯蔵管理されています。https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/final_disposal.html
大切な部分を抜き出す。
前述のとおり強い放射線が出ますが、約2mのコンクリートがあれば遮蔽できるため、安全に管理することが可能です。(図05)
遮蔽できているのだ。
だから立っていられたのかも知れない。
しかし、ここには具体的な線量が書かれていない。
もう少しクリティカルに進めよう。
【Word9】「日本原燃」and「○○」
今度は「会社名」にワードを「組み合わせて」検索してみた。
会社名だけで「徹底的に調べる」という手もあるが、
and「○○」で試してみる方が便利な時もある。
1回目。「日本原燃」and「ガラス固化体」。
これは「空振り」に終わった。
2回目。「日本原燃」and「高レベル放射性廃棄物」。
「廃棄物管理事業の概要」というページがヒットした。
かなり具体的である。
返還されたガラス固化体は、六ヶ所村の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターで、最終的な処分に向けて搬出されるまでの30~50年間冷却・貯蔵されます。ガラス固化体の輸送は、1995年4月から開始され、2007年3月末までに1,310本がフランスより返還されています。フランスからのガラス固化体の返還は終了し、2010年3月からイギリスからガラス固化体の返還が開始されています。(図06)https://www.jnfl.co.jp/ja/business/about/hlw/summary/
そうだった!
日本国内では処理がダメになったので国外で処理していたのだった。
ここで、最初に調べた北海道電力のサイトを思い出した。
北電のサイトに次のようにあったではないか!
ガラス固化体は、青森県六ヶ所村の貯蔵施設で30~50年間貯蔵し、冷却します。
情報が一致する。
原燃のサイトでは「1995年の4月から」とある。
今年で25年目だ。
これで何年経っているのかが判明した。
また「整理」する。
最初の問い。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
「製造直後は」150万ミリシーベルトだった。
女性が立っていたガラス固化体は「製造直後」ではない。
50年後の「オーバーパック」状態でもない。
写真を撮った日付まではわからないが、
およそ20~25年目くらいだろうか。
【Word10】また戻る(再確認)
冷却期間は分かった。
少なくとも30~50年間は貯蔵される。
ここで最初の問いを「再確認」する。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
この問いの「目的」は何だったのか。
寿都町や神恵内村で言われる「核のごみ」の安全性を知りたかったのだ。
最初の問題設定は「目標」であって、目的は別だと気づいた。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
経過年数によっても違ってくるが、安全性がわかればよいのだ。
資源エネルギー庁のページに次のようにあったではないか!
オーバーパックという厚さ約20cmの金属容器に包み、50年が経過すると、放射線量はオーバーパックの表面で2.7mSv/h、1m離れれば0.37mSv/hまで低下します。資源エネルギー庁「放射性廃棄物の適切な処分の実現に向けて」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/final_disposal.html
埋設はオーバーパックした状態で行われる。
オーバーパックは30~50年後に行われる。
つまり、50年後だと仮定して、放射線量はオーバーパックの表面で2.7mSv/hである。
簡単な「三段論法」である。
あとは、「2.7mSv/h」の危険性もしくは安全性が具体的に分かればよい。
【Word11】「放射線量」and「毎時」
ただし、単位に気をつけなければならない。
2.7mSv/hは「毎時」である。
一体、どのくらいなら「毎時」でも安全なのだろう。
「放射線量」and「毎時」で検索すると、環境省がその基準を示していることがわかった。
毎時0.23マイクロシーベルト
単位が「マイクロシーベルト」である。
年間にして1ミリシーベルト。
2.7mSv/hでは「安全ではない」ことになる。
ただし、ここでも冷静さは求められる。
この「2.7mSv/h」は、オーバーパックの表面の線量である。
埋設させれば数値は違ってくる、
【Word12】「放射線量」and「距離」
長文になるが抜粋する。
同じ量だけ放射性物質があったとしても、放射線の強さ(線量率)は、放射線を出しているものから近ければ強く、遠ければ弱くなります。放射性物質が1箇所にあるのであれば、距離の2乗に反比例して線量率は低くなります。また、大気等の影響によっても線量率は低くなります。放射性物質が広い平面上に一様分布している場合、距離と線量率の関係を表す式は複雑になりますが、点線源の場合と同様に、地面からの高さが高くなるほど線量率は低くなります。ただし、実際には一様ではなく不均一な分布であること、滑らかな平面ではないこと、空気などによる減衰などから、必ずしも関係式で得られる値になるとは限りません。
外部被ばく線量を計算するときには、放射能の強さを表すベクレルからではなく、人体が受けた放射線の量(グレイあるいはシーベルト)から計算します。線量率が一定であるならば、その線量率に放射線を浴びていた時間を乗じることで被ばく量を計算することができます。「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成29年度版)の掲載について」(環境省)
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-02-04-05.html
大事な部分を抜き出す。
放射線の強さ(線量率)は、放射線を出しているものから近ければ強く、遠ければ弱くなります。
当然だろう。
その強さは「距離の2乗に反比例」して低くなると書かれているが、この点について、今は深掘りしないでおく。
【Word13】「放射線量」and「距離」+「埋設」
環境省の資料にタイトルの無いPDFが出て来た。
出典は日本原子力研究開発機構の「埋設処分における濃度上限値評価のための外部被ばく線量換算係数(2008年)」とある。
電荷を持つ粒子や電磁波は、電磁力で物質と相互作用し、エネルギーを失った結果、透過力が下がり、最終的には止まります。α線は電離密度が高いので空気中で数cmしか飛ばず、紙1枚で止めることができます。β線は、エネルギーによりますが、大体空気中で数m、プラスチック1cm、アルミ板2-3mm程度で止まります。γ線・X線はα線やβ線よりも透過力が高く、これもエネルギーにもよりますが、空気中を数10mから数100mまで透過することもあります。γ線は、鉛や鉄の厚い板など密度が高いもので遮へいでき、コンクリートや土、水などでも厚くすることなどにより遮へいできます。X線やγ線と中性子の遮へいは質的に異なります。電荷を持たない中性子は、物質を構成する粒子と直接衝突することで運動エネルギーを失い、止まります。中性子の運動エネルギーを奪うためには、陽子(水素の原子核)と衝突させることが最も効果的です。https://www.env.go.jp/jishin/rmp/conf/11/ref02-3.pdf
大事な部分を抜き出す。
α線は電離密度が高いので空気中で数cmしか飛ばず、紙1枚で止めることができます。
これはだいぶ昔に教わった記憶がある。
β線は、エネルギーによりますが、大体空気中で数m、プラスチック1cm、アルミ板2-3mm程度で止まります。
これもだ。だんだん思い出して来た。図を見たことがある。
γ線は、鉛や鉄の厚い板など密度が高いもので遮へいでき、コンクリートや土、水などでも厚くすることなどにより遮へいできます。
また、
X線やγ線と中性子の遮へいは質的に異なります。電荷を持たない中性子は、物質を構成する粒子と直接衝突することで運動エネルギーを失い、止まります。中性子の運動エネルギーを奪うためには、陽子(水素の原子核)と衝突させることが最も効果的です。
この部分は分かりづらいが図を見ると分かる。(図07)
【Word14】「α線」「β線」「γ線」「X線」
ところで、高レベル放射性廃棄物から出るのは何線だ?
こんな基本的なことでさえ、「調べ直さなければ」分からない。
この4つを同時に打ち込んで検索すると次の説明が出て来た。
放射線とは、科学的にいうと、高いエネルギーをもち高速で飛ぶ粒子(粒子線)と、高いエネルギーをもつ短い波長の電磁波の総称です。「放射線の種類と性質」(電気事業連合会)
https://www.fepc.or.jp/nuclear/houshasen/houshanou/shurui/index.html
また、
アルファ線、ベータ線、中性子線は粒子、ガンマ線とX線は電磁波です。(前掲)
今更感はぬぐえない。
ところで、高レベル放射性廃棄物から出るのは何線だ?
この問いは基本的過ぎて調べられないのか?
なかなか見つからない。
【Word15】「高レベル放射性廃棄物」and「○線」
「高レベル放射性廃棄物」and「α線」の5番目でヒットした。
この廃液は、核分裂生成物(FP)の大部分と、Np、Am、Cmなどアクチノイド元素を含み、β線、γ線を放出する放射性核種濃度が高いため発熱量が大きい。この廃液は濃縮して容積を減らしガラスに溶け込ませ、ステンレス製の容器(キャニスター)に固化される(ガラス固化体)。「原子力百科事典ATOMICA」(日本原子力研究開発機構)
https://atomica.jaea.go.jp/dic/detail/dic_detail_2563.html
β線とγ線だ。
β線は、エネルギーによりますが、大体空気中で数m、プラスチック1cm、アルミ板2-3mm程度で止まります。(再掲)
γ線は、鉛や鉄の厚い板など密度が高いもので遮へいでき、コンクリートや土、水などでも厚くすることなどにより遮へいできます。(再掲)
β線は問題ないようだ。
γ線も「鉛や鉄の厚い板など密度が高いもので遮へいでき」、
「コンクリートや土、水などでも厚くすることなどにより遮へいでき」る、
とある。
どちらとも安全なように思えるが、「念のため」に、次のワードで調べておく。
【Word16】「高レベル放射性廃棄物」「埋設」「深さ」
これは法律で定められていた。
法律(「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」)において「地下300メートル以上の政令で定める深さの地層において、特定放射性廃棄物及びこれによって汚染された物が飛散し、流出し、又は地下に浸透することがないように必要な措置を講じて安全かつ確実に埋設すること」と定められています。
https://www.numo.or.jp/q_and_a/faq/faq100070.html
(図08)この図を「よく見る」と、
オーバーパックの周りにも何かの囲いがある。
同じワードで検索を「続ける」と、
次の資料が出て来た。
特定放射性廃棄物2)のまわりに人工的に設けられる複数の障壁(人工バリア)と、特定放射性廃棄物に含まれる物質を長期にわたって固定する天然の働きを備えた地層(天然バリア)と組み合わせることによって、特定放射性廃棄物を人間環境から隔離し、安全性を確保する「多重バリアシステム」により実施するものとする。「放射性廃棄物の処分について」(原子力環境整備促進・資金管理センター)(図09)
https://www.rwmc.or.jp/disposal/high-level/3-1.html
「また整理」する。
β線は、エネルギーによりますが、大体空気中で数m、プラスチック1cm、アルミ板2-3mm程度で止まります。(再掲)
γ線は、鉛や鉄の厚い板など密度が高いもので遮へいでき、コンクリートや土、水などでも厚くすることなどにより遮へいできます。(再掲)
β線は「大体空気中で数m」で遮蔽できるのだから土壌中でも同じではないだろうか。
これも「念のために」が必要か?
γ線は「土、水などでも厚くすることなどにより遮へい」できるとある。
「地下300メートル以上」は、この「厚くする」を十分満たすだろう。
そこで、「一旦」結論づけておく。
【仮の結論】
埋設はオーバーパックした状態で行われる。
オーバーパックは30~50年後に行われる。
つまり、50年後だと仮定して、放射線量はオーバーパックの表面で2.7mSv/hである。
この「2.7mSv/h」は危険なのか安全なのか。
「埋設」は「地下300メートル以上」だった。
「廃液」で問題なのはβ線とγ線であったが、
どちらにせよこれらは「遮へい」できる。
従って、「危険」ではない。
【Word17】「空気」「コンクリート」「土」「水」
またまた「整理」する。
β線は、エネルギーによりますが、大体空気中で数m、プラスチック1cm、アルミ板2-3mm程度で止まります。(再掲)
γ線は、鉛や鉄の厚い板など密度が高いもので遮へいでき、コンクリートや土、水などでも厚くすることなどにより遮へいできます。(再掲)
簡単な言葉が出ている。
「空気」「コンクリート」「土」「水」である。
これらを「説明」できるか?
小学生でも分かりそうな言葉である。
コンクリート?
説明できそうだ。
でも、本当は知らない。
検索にかける。
コンクリートは,鋼材とともに土木・建築工事に欠かせない材料であり,セメント,水,細骨材,粗骨材および若干の空気泡で構成される構造材料です。「基礎講座シリーズ コンクリートの基礎講座」(一般財団法人セメント協会)
https://www.jtccm.or.jp/Portals/0/resources/library/new/7_kikaku/publication/kisokouza/kisokouza.pdf
「セメント」とは何か。
セメントの主な原料は,石灰石,粘土,けい石,鉄原料,せっこうです。セメント1トンを製造するために約1.5トンの原料が必要となります。(前掲資料)
ここで、またまたまた「整理」する。
β線は、エネルギーによりますが、大体空気中で数m、プラスチック1cm、アルミ板2-3mm程度で止まります。(再掲)
γ線は、鉛や鉄の厚い板など密度が高いもので遮へいでき、コンクリートや土、水などでも厚くすることなどにより遮へいできます。(再掲)
β線は、「空気中で数m」で遮蔽できる。
γ線は、「鉛や鉄」はもとより「コンクリートや土、水など」でも遮蔽できる。
今は「念のために」調べたわけだが、【仮の結論】は修正する必要が無さそうだ。
【中間結論】
埋設はオーバーパックした状態で行われる。
オーバーパックは30~50年後に行われる。
高レベル放射性廃棄物で問題なのはβ線とγ線であった。
検索をかけた結果、どちらも遮蔽できる。
従って、「危険」ではない。
【Word18】「距離の2乗に反比例」
ここで、保留していた「距離の2乗に反比例」を検索してみる。
なんとウィキペディアでも分かってしまう。
逆2乗の法則(ぎゃくにじょうのほうそく、英: inverse square law)とは、物理量の大きさがその発生源からの距離の2乗に反比例する、という法則である。逆2乗とは2乗の逆数のことであり、この法則はしばしば、ある物理量の大きさがその発生源からの距離の逆2乗に比例する、という形でも述べられる。逆2乗の法則はしばしば短縮して逆2乗則とも呼ばれる。
つまり、距離が2倍になれば4分の1に、3倍になれば9分の1になるという意味である。
そこで最初の問いに戻る。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
50年後だと仮定して、
オーバーパックの表面で2.7mSv/hである。
環境省の安全基準は0.23マイクロシーベルト毎時である。
ただ、この「2.7mSv/h」はオーバーパックの表面の線量であった。
埋設は「地下300メートル以上」である。
β線であってもγ線であっても遮蔽できる。
しかも、深い場所に埋めれば、「距離の2乗に反比例」して低くなる。
遮蔽できる上に、距離もある。
ここて思い出す。
【記憶】
【Word13】「放射線量」and「距離」+「埋設」で調べた時に、
タイトルの無い謎のPDFが出て来ていた。
その中に「距離の2乗に反比例」という言葉が出ていたのを思い出した。
日本原子力研究開発機構の「埋設処分における濃度上限値評価のための外部被ばく線量換算係数(2008年)」というPDF資料である。
https://www.env.go.jp/jishin/rmp/conf/11/ref02-3.pdf
再度調べて見ると、あった!(図10)
小さな文字で、次の記述がある。
例えば、1つの線源から1cmと1mの地点での放射線の強さは1万倍違う。(実際に、いろいろな場所に複数の線源がある場合には単純には計算できない。)
「距離の2乗に反比例」という表現は難しいが、「1万倍」なら計算出来そうだ。
「1cmと1mの地点で」「1万倍違う」という。
オーバーパックの表面の線量は2.7mSv/hだった。
1000分の1だと2.7マイクロSv/hである。
1万分の1だと0.27マイクロSv/hである。
表面から1m離れただけでこの値である。
300m離れた時の数値は0.27マイクロSv/hどころではない。
もっともっと小さくなる。
環境省の安全基準は0.23マイクロシーベルト毎時だった。
確実に安全基準を満たしている。
【Word19】「シーベルトを用いる様々な量(空間線量と個人線量)」
更によく見ると、
小さな指マークで、
「シーベルトを用いる様々な量(空間線量と個人線量)」という資料名が出ている。
この「資料名」で検索してみる。
すると、5番目に次の資料があった。
「放射線リスクに関する基礎的情報」という復興庁の資料である。
これが環境省が使っていた謎のPDFだった!
30ページに同じ記述がある。
例えば、1つの線源から1cmと1mの地点での放射線の強さは1万倍違う。(実際に、いろいろな場所に複数の線源がある場合には単純には計算できない。)「放射線リスクに関する基礎的情報」(復興庁)
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/basic_info_on_radiation-risk/latest/kisoteki_jouhou.pdf
これで「1万倍」の出典も分かった。
【最終結論】
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
50年後だと仮定して、
オーバーパックの表面で2.7mSv/h
環境省の安全基準は0.23マイクロシーベルト毎時である。
埋設は「地下300メートル以上」である。
β線であってもγ線であっても遮蔽できる。
これは「距離の2乗に反比例」して低くなる。
「1万分の1」だ。
1m離れただけで数値は0.27マイクロSv/hになる。
埋設は「地下300メートル以上」である。
従って、0.27マイクロSv/hより遥かに小さく、国の安全基準(0.23マイクロシーベルト毎時)を満たしている。
よって「危険」ではない。
■まとめ1
以上が、北海道の寿都町と神恵内村で騒がれた「核のごみ」問題の実態である。
メディア報道には具体的な数値が出て来なかった。
そこで「自分で」調べてみた。
様々なスキルを必要とした。
そのスキルは、カギ括弧付きで強調してみた。
また、意識・態度として「冷静さ」や「粘り強さ」や「丁寧さ」が必要だった。
「クリティカルな思考力」
「プログラミング的な思考力」
と表現してもいいだろう。
また、
基礎的な学力も必要だった。
これは、
「小学校4年生程度の読み書き計算」
と表現してもいいだろう。
しかし、これらだけでは問題を解決出来ないと実感した。
あとひとつ、
「放射線に関する基本的な知識」
も必要だった。
これは文科省が推進している「放射線教育」なのだろうか?
【Word20】「放射線教育」
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と津波によって東京電力株式会社福島第一原子力発電所で事故が起こり,この事故により放出された放射性物質は,日本に大きな被害を与えました。
文部科学省では,福島第一原子力発電所の事故後の状況を踏まえ,平成23年度に作成した「放射線等に関する副読本」の内容を見直し,児童生徒等が放射線に関する科学的な知識を身に付け,理解を深めるための一助となるよう,平成26年3月に,放射線副読本として,小学生用と中学生・高校生用の2種類を作成・配布しました。平成30年10月には、平成26年3月の作成から4年が経過し,当時から状況が変化していることから,内容や構成の見直し等について検討を行い,放射線副読本を改訂しました。改訂した放射線副読本は,全国の小学校,中学校,高等学校等に配布し,その活用を促しています。「放射線教育」(文部科学省)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/housyasen/index.htm
「放射線副読本(平成30年10月改訂)」(図11)は次である。
この副読本を授業で扱えば「放射線に関する基本的な知識」を手に入れることができるのだろうか?
答えは「ノー」だ。
2冊の副読本を読んでも、復興庁の資料にあるような「放射線リスクに関する基礎的情報」は手に入らない。
「距離の2乗に反比例」も「1万倍」も出て来ない。
国の「放射線教育」と「放射線に関する基本的な知識」との間には大きな違いがある。
■まとめ2
「核のごみ」問題という一例(報道読解)をするためだけでさえ、
様々な知識・スキル・能力・意識を必要とした。
高レベル放射性廃棄物の放射線量は何シーベルトなのか?
この問いに答えるだけでさえ、こんなに大変なのである。
振り返ってみよう。
「自分で調べる」ためには様々な「調べるスキル」を必要とした。
「情報活用能力」である。
角度を変えたら「問題解決能力」とも言える。
「問いの設定」はかなり重要だった。
こうした能力は今後ますます必要になるだろう。
また、「クリティカルな思考力」や「プログラミング的な思考力」といった「意識」も必要であった。
既存用語で「学習への関心・意欲・態度」と言っていいだろう。
これは残念ながら、日本の現状では育てられていない。
日本人は世界一勉強嫌い、日本の社会人の勉強時間は6分間、
といったような記事もあるほどだ。(図00)
https://stupidwise.net/studytime/「転職・仕事の悩み・社会人の勉強時間は1日6分だけ!【収入を上げる勉強まとめ】2020.07.23」
また、
学校教育が果たすべき基礎学力(「学力の基礎」)の保障もまだまだ達成できていないと感じる。
また、
一定の読解力も必要だった。
「一定の」として、すべての子どもに保障すべきである。
「報道」はどんどん「作品化」されている。
「一定読解力の保障」は重要度を増している。
格差を生じさせない(一人も取り残さない)ためには、
「学力の基礎」とともに重要な課題だ。
また、
ワーキングメモリ(作業記憶)の発達保障=脳の健康も大切だ。
これは学校教育だけの問題ではない。
「子育て」も重要な枠組となっている。
■まとめ3
分類・整理する。
(1)学力の基礎(4年生程度の読み書き計算)
(2)情報活用能力(問題解決能力)
(3)学習への関心・意欲・態度(思考意識)
(4)情報の読解力(テキスト・非テキスト)
(5)ワーキングメモリの発達保障(脳の健康)
(1)「学力の基礎」は「すべての子」にとって共通の土台である。
(2)(3)(4)(5)は「すべての子に同じ目標」を設けない。
「個別最適化」で良いと考える。
「各学校」という「学校の個性」があっても良いと考える。
「家庭教育」「社会教育」も関わって来る。
(2)(3)(4)(5)には次の枠組からも整理できる。(図12/自作)
①他人が真似できない体験
②機械が真似できない能力
③脳・体・精神の健康
日本人は世界一の長寿国である。
「2007年生まれの子どもの半数が到達する年齢」は107歳と言われている。
https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000405093.pdf
人生100年時代構想会議中間報告(平成29年12月)厚生労働省
ということは、
①「他国が真似できない体験」をしている。
②「他国が真似できない能力」を求められている。
③「他国に先駆けて」脳・体・精神の健康が必要になっている。
これらこそ、「コンパクト国家・日本」の課題であると確認できた。
参考図書:リンダ グラットン, アンドリュー スコット『LIFE SHIFT(ライフ・シフト) 』