講座360 正しく理解「クレーン現象」
うちの孫は10ヵ月を過ぎたところです。
つい先日、「クレーン現象」が見られるようになりました。
知ってますか? クレーン現象。
これです。
クレーン現象というのは、子どもが何かをしたいときに、自分でやるのではなく、親の手を取ってやらせる行為です。
今回はこの「クレーン現象」について解説します。
2.理解の仕方・対応の仕方
3.ASD傾向が強い場合
1.クレーン現象はASD児に多い?
ネットで「クレーン現象」を検索すると、ASD(自閉スペクトラム症)の子に多く見られるという解説が目につきます。
そのため心配になってしまう人もいるはずです。
でも、クレーン現象=ASDではありません。
ASDのお子さんは不安傾向が強いのが特徴です。
心配性というか、失敗を恐れるというか。
そういう性格の人は大人にもいますよね。
そう考えると、
自分でやるのは怖いから、まず誰かにやってもらう
自分ではやらずに、お手本を先に見せてもらう。
それは賢い選択です。
支援の仕方を知っている小学校の先生は、ASDの子を一番にやらせることはしません。
何人か他の子がやる様子を見せて、その子が「ああやってやるのか」と安心したところで取り組ませます。
これがASDの子に対する理解と支援です。
ASDの子は心配性(理解) → 他の子がやるのを見せてから取り組ませよう(支援)
こうした特徴は幼少期から見られるはずです。
その一場面がクレーン現象です。
自分ではやらずに、親の手を取ってやらせる
この行為に対する理解は「心配だから」「自信がないから」「不安だから」ということです。
対応は「やってあげる」「手本を見せる」となります。
この時に、やり方をあえて「ゆっくり見せる」とか、「楽しそうにやってみせる」などのサービスがあるとなおいいですね。
不安を消しちゃうサービスです。
さらに、言葉による説明も加えるともっといいです。
ASD傾向のお子さんは言語の発達が通常より遅くなることがあります。
クレーン現象を要求して来た時は、言葉を教えるチャンスです。
もうひとつ加えるとしたら視線ですね。
お手本を見せる時に、どこかでお子さんと目を合わせてみてください。
ASDのお子さんは、モノに関心を示すあまり、人を見ない傾向があります。
教えてもらっている時に人の表情を見るというのは一つのコミュニケーションスキルです。
そうしたことも教えられます。
2.理解の仕方・対応の仕方
「クレーン現象=ASD」なのかという話に戻ります。
それは間違った情報です。
イコールではありません。
まず、時期が問題です。
1歳前後なら誰にでも起こり得ます。
健常に発達しているお子さんでもクレーン現象は起きます。
動機はやっぱり、ちょっと不安があるからなのでしょう。
「お母さん、やってみて!」
そんな感じで、母親の腕をつかむのだと思います。
まだ言葉を獲得していないわけですから、クレーンが言葉の代わりです。
理解と対応はASD児への対応と同じです。
【理解】ちょっと不安 → 【対応】お手本を見せる
この時に、ゆっくりやったり、楽しそうにやったり、話しかけながらやったり、どこかで目を合わせたりすれば完璧です。
そして、お子さんが自分でもやり始めたら、それはうんとほめてあげてください。
不安を乗り越えて、小さな挑戦したわけですから。
もし、仮にその子がASD傾向を持っていたとしても、こうした遊びのくり返しで、その特性は目立たなくなる可能性があります。
乳幼児期にASD傾向があっても、就学前の育ち方がよければ、小学校に上がる時にはいつのまには凸凹が目立たなくなるお子さんも少なくありません。
3.ASD傾向が強い場合
ただし、2歳、3歳を過ぎて、しゃべれるのにクレーン現象から離れられないお子さんもいます。
そのようなお子さんは、不安が強い=ASD傾向が強いのだと思います。
知覚の発達支援センターなどへ相談してみることをオススメします。
それまでの間、日常の理解と対応の仕方は同じです。
気持ちに寄り添いながら、よりはっきりとした言葉を添えて、要求に応じてあげてください。
「お母さん、ジュースをとって下さい」って言える?
みたいに、お願いする時の「言葉の定型」を教えて、少しずつ言葉だけでコミュニケーションがとれるように導きます。
この時に教える言葉は「丁寧な言葉」がよいのです。
「お母さん、ジュースとって!」ではなく、
「母さん、ジュースとってください」です。
これが言葉の定型です。
ASDのお子さんは雰囲気を読んで場に合わせた言葉づかいをするのが苦手です。
堅苦しくする必要がない場面でも敬語を使ったりします。
でも、それを否定しないでください。
どんな言葉を使うかということも不安なんです。
社会的に無難なのが「丁寧な言葉」なのです。
学校の授業では「丁寧な言葉」が公用語です。
それを馬鹿にする人がいるなら、それは理解が足りない人なのです。
1件の返信
[…] 不安を乗り越えて、小さな挑戦したわけですから。(参照:講座360 正しく理解「クレーン現象」) […]