講座263 愛着障害・愛着不全について④
前回までの解説で「愛着障害」の解説は一旦終了です。
今回は「愛着障害にならないための育て方」の話です。
2.6ヵ月~1歳半
3.1歳半~3歳
4.その後
5.まとめ
1.新生児~6ヵ月
この時期は「愛着形成の出発期」です。
赤ちゃんは「不快」と闘っています。
お母さんは、赤ちゃんの不快を取り除くために格闘する時期です。
(1)不快の解消
もう一つ大事な行動があります。
赤ちゃんの発達(脳の発達)を促す行為です。
(2)刺激を与える
必要な刺激は3つあります。
➀笑顔
②スキンシップ
③コミュニケーション
新生児~6ヵ月における愛着形成の仕方は以上です。
「これだけ?」
とも思えますが、お母さんにとってはこれだけでも大変なことです。
ですから、母親に対する周囲のサポートも欠かせません。
それが「社会全体で子育てをする」という人間の子育てです。
まとめます。
【新生児~6ヵ月期】愛着形成の出発期
(1)不快の解消
(2)刺激を与える
①笑顔
②スキンシップ
③コミュニケーション
2.6ヵ月~1歳半
愛着形成の最適期です。
子どもが愛着を手に入れる「最適の時期」ということです。
「愛着形成の敏感期」とも言えます。
この時期に子どもは「安全基地づくり」を始めます。
A‐1 抱っこして甘えさせてくれる
A‐2 要求を満たしてくれる(成功体験)
赤ちゃんは6ヵ月頃から「要求」をするようになります。
不快で泣いていたのが、要求(~して!)で泣くようになります。
その要求に対して、無視したり、突き放したりしないで、
受けとめてあげることによって(=子どもにとっての成功体験)
愛着は形成されます。
特に、赤ちゃんの要求の中では「抱っこ」が中心的になります。
まとめます。
安全基地の【機能A】
A‐1 抱っこして甘えさせてくれる
A‐2 要求を満たしてくれる(成功体験)
この2つをすることによって母親は子どもにとっての「安全基地」になることが出来ます。
その最適期が6ヵ月~1歳半の期間ということです。
3.1歳半~3歳
愛着形成の完成期です。
母子が安全基地を完成させる時期です。
B‐1 「参照視」に応じてくれる
B-2:「報告」を受けとめてくれる
参照視というのは「わかりきっていることを確認する行為」です。
「お母さん、これ開けていい?」
開けていいに決まっている問いかけに対し、
「いいわよ。開けてごらん」などと応じてあげることで愛着は形成されます。
報告というのは何かを報告することです。
「お母さん!フタ開けたよ!」
などと、子どもはわざわざ報告します。
「えらいね!自分で開けられたね!」などと応じてあげることで愛着は形成されます。
安全基地の【機能B】
B‐1 「参照視」に応じてくれる
B-2:「報告」を受けとめてくれる
母親がこの2つの機能を持つことによって、この時期の愛着形成が完成します。
その「完成期」が1歳半~3歳ということです。
4.その後
いったん形成された愛着は、7~8割で生涯にわたり持続されると言います。(岡田尊司)
つまり、70~80%の確率で、
いったん形成された愛着は一生消えない。
と言えます。
そして、その子の人生における「財産」となります。
一生ものの財産です。
どんな良いことがあるか。
(1)仕事をうまくこなせる
(2)ほどよく人を頼れる
(3)ほどよく人生を楽しめる
(4)健康管理ができる
(5)メタ認知ができる
(6)子育てがうまくいく
逆に、この時期に愛着形成を完成できなければどうなるか。
(1)幼児期や児童期に愛着障害を引き起こしやすい(傷つきやすい)
(2)思春期に挫折しやすい
(3)何かに依存しやすい
(4)子育てに困難を抱える
この(1)が、講座260で示した「愛着障害5つの特徴」です。
「攻撃・パニック」、「フリーズ」、「無気力」、「自虐」、「ベタベタ」
そして、それをもう少し具体化したのが①~⑰の特徴です。
➀落ち着かない
②高い所に上る
③物を投げる
④非を認めない
⑤ごまかす
⑥痛がらない
⑦わざと物を壊す
⑧靴を脱ぎたがる
⑨すぐ暴力を奮う
⑩全否定的
⑪自己防衛的
⑫助けを求められない
⑬注目されたい
⑭努力が積み上がりにくい
⑮その気になりにくい
⑯感情表現が苦手
⑰不安傾向が強い
つまり、愛着障害を抱えた子は、
幼児期や児童期にこうした困難を抱えるだけではなく、
思春期以降の人生においても、
様々な困難を抱え続けることになります。
5.まとめ
「愛着障害にならないための育て方」のまとめです。
【1】新生児~6ヵ月期(愛着形成の出発期)
・「不快」の解消と「刺激」
【2】6ヵ月~1歳半期(愛着形成の敏感期)
・「要求」の充足(成功体験)
【3】1歳半~3歳期(愛着形成の完成期)
・「参照視」と「報告」の受けとめ
次回は次の疑問にお応えします。
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「愛着障害・愛着不全について」①~④では以下の4冊の本を参考にさせていただきました。
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