講座262 愛着障害・愛着不全について③
ここまでの内容をひとことで言うとこうなります。
「愛着障害の子は傷つきやすいので特別な配慮が必要」
その一つが「母親役を一人決める」ということでした。
今回はその「一人(キーパーソン)」がどんな行動をとればよいのかについて解説します。
こうした行動を「母親」と共有できれば理想的な修復になると思います。
2.応答してあげる
3.傷対応
4.まとめと次回の予告
1.安心感を与える
キーパーソンがとるべき一つ目の行動は「安心感を与える」ということです。
これは、もとをたどれば生後6か月~1歳半の時期に必要だった【愛着A】です。
【愛着A】というのは次の2つの機能を指します。
A-1:甘えさせてくれる(スキンシップも含め)
A-2:要求を満たしてくれる(成功体験)
適切な時期にこれが出来なかったことが愛着障害の主因です。
したがって、【愛着A】を取り戻させてくれるような行動がキーパーソンに求められます。
ただし、子どもの年齢が本来とズレています。
学校や幼稚園に通って集団生活を求められる年齢になっているわけですから環境が異なります。
集団生活をしながら、周りの子どもたちとは違った配慮が必要になります。
キーパーソンに「高い指導力」が求められる理由がここにあります。
2.応答してあげる
キーパーソンがとるべき二つ目の行動は「応答してあげる」ということです。
これは、もとをたどれば1歳半~3歳の時期に必要だった【愛着B】です。
【愛着B】というのは次の2つの機能を指します。
B-1:「参照視」に応じてあげる
B-2:「報告」に対して受けとめてあげる
これも適切な時期に出来なかったことが推測されます。
参照視というのは「わかりきっていることを確認する行為」です。
「お母さん、これ開けていい?」
などと、開けていいに決まっているのにお母さんに確認します。
普通だったら「いいわよ。開けてごらん」などと言いますよね。
でも母親によっては「自分で考えなさい!」と突き放したり、
「オマエ馬鹿か?」と蔑んだりする場合があります。
これが参照視に応じていないケースです。(参照:NPO法人ペアレントサポート旭川)
この参照視というのは、探索行動の一種です。
探索行動とは、お母さんの元を離れて自分で行動しようという自立の芽生えです。
入れ物のフタを自分で開けてみようという探索行動を始めたわけですが、
自信をつけるためにお母さんに確認してエネルギーをもらう行動です。
だから、わざわざ確認するわけです。
そう考えると、それを無視したり馬鹿にしたり出来ませんよね。
愛着形成が出来ないお母さんは、こうした理解が出来ていないだけなのかもしれませんね。
この「参照視」と同じような機能に「報告」もあります。
報告というのは、その名の通り、母親に何かを報告することです。
「お母さん!フタ開けたよ!」とか、
「お菓子入ってたよ!」などと報告する行動です。
普通だったら「自分で開けられたね!」とか、
「お菓子入ってたね!」などと応じますよね。
でも母親によっては無視したり、
「食うなよ!」などと、報告に応じる言葉がない場合があります。
これが報告に応じていないケースです。(参照:米澤好史『愛着関係の発達の理論と支援』)
B-1:「参照視」に応じてあげる
B-2:「報告」に対して受けとめてあげる
この2つが【愛着B】の「応答してあげる」です。
3.傷対応
愛着障害になっている子は以上の【愛着A】と【愛着B】を完成できないまま成長して来ました。
スタートでつまずいて周回遅れになっているような状態です。
【傷A】愛着不全のまま走っている
【傷B】集団の中ではみんなと同じ年齢
この2つの傷を常に負っているのが愛着障害の子です。
キーパーソンとなる人は、この2つの難しさに対応しなければなりません。
キーパーソンに求められる行動を8つにまとめてみました。
(1)感受性を高める
キーパーソンは感受性を高める必要があります。
「察知してあげる」という行動です。
(2)叱らない・脅さない
叱られることに敏感ですから「叱らない対応」が必要です。
でも、指導は必要ですし、集団の目もあります。
この講座で解説してきた「正しい叱り方」を使って対応します。
(3)感情ラベリング
愛着障害は「感情の障害」とも言われます。
その子の感情を「言葉にしてあげる」という対応も必要です。
これは「感情ラベリング」と呼ばれます。
講座40では「ほっとダウン」というスキルとして紹介しています。
(4)枠組み支援
安心や応答は重要ですが、何でも認めるというわけにはいきませんよね。
そこで、「感情は受容してあげるけど行動は認めない」という支援が必要になります。
これが「枠組み支援」です。
これも講座40の中で解説してあります。
(5)先手支援
「エラーレス対応」とも呼ばれます。
失敗させない対応です。
(6)成功支援
小さなミッションを与えて成功体験を与える支援です。
「役割を与えて成功させる」という解釈でも構いません。
(7)主導権を渡さない
年齢が上がっていますからダメな行動やズルイ行動もします。
キーパーソンが言いなりになってしまわないことも大切です。
子どもに「負けない」対応も出来なければいけません。
(8)帰属支援
集団帰属意識を持たせることです。
「自分もみんなと同じなんだ」という気持ちを持たせる支援です。
配慮が必要だと言っても、年齢は同じですから欠かせない支援です。
特に、思春期が近づくほどプライドが傷つきやすくなりますから難しくなります。
以上の(1)~(8)を私は「傷対応」と呼んでいます。
4.まとめと次回の予告
今回はその「一人」がどんな行動をとればよいのかについて解説しました。
大きくまとめると3つになります。
1.安心感を与える【愛着A】の回復
A-1:甘えさせてくれる(スキンシップも含め)
A-2:要求を満たしてくれる(成功体験)
2.応答してあげる【愛着B】の回復
B-1:「参照視」に応じてあげる
B-2:「報告」に対して受けとめてあげる
3.傷対応
【傷A】愛着不全のまま走っている
【傷B】集団の中ではみんなと同じ年齢
この2つを理解した8つの支援。
次回は、本来の愛着形成の仕方について解説します。
講座263 愛着障害・愛着不全について④
5月から、小学校で学級支援員のアルバイトをすることになりました。仕事の説明を受け、上記のような子供を対応する可能性があるようです。参考になります。
しかし、私は専門家でも有資格者でもないです。加配の保育者のように1日中ずっといるわけでもありません。1日3時間の業務です。加配の先生の様な方がいるような感じでもありません。このブログを紹介した方が良いのでしょうか?
働いてみてから自然に決めましょう!
学校の先生はプロですから大丈夫だとは思いますが、
もし苦労されているようでしたらご紹介ください。
そうですよねありがとうございます、