講座562 高校受験は「様変わり」している

私は中学・高校の先生方が集まる勉強会に参加しています。
先日、中学校の若い先生が悩みを相談されました。
今日はそのことについて書きます。
2.学校教育は〝上〟から変わる
3.専門家の出前授業
4.「時代の変わり目」に何をするか

1.高校受験は「様変わり」している
悩みというのは、
〈生徒たちの学習意欲が落ちている〉ということです。
まあ、よくある態で言ってしまえば「授業中にやる気がない」ということです。
決定的な違いは、今と昔の〝中3〟です。
昔の中学校なら、中学3年生の2月と言えば、高校受験の直前であって、荒れたクラスでも授業が成立するほど緊張感があったものです。
ところが今はそうじゃありません。
ダラーとした雰囲気があちこちの学校から感じられます。
この現象については、以前から時々見聞きしていました。
これまでに私の耳に入っていた情報をいくつか書き出してみましょう。
(1)願書の提出に緊張感がなくなった話
昔の中学生は、「願書」という言葉を聞いただけでビビったくらいに神聖なものでした。
冬休み中から下書きの練習をしなければいけないくらいの一大イベントだったのです。
自分の住所を知らない生徒や親の名前を書けない生徒は、ここでバレます。
清書となれば緊張して文字が震えるほどなのですが、残念ながら字は急にうまくはなりません。
親のほうも、収入印紙と収入証紙を間違って買ってしまったり、その準備はそれなりに緊張します。
そうです。家庭の中にもちゃんと緊張感があったのです。
ところが、今は様子が一変しています。
〈期日までに学校に提出〉と伝えても、
「あ、持って来るの忘れました」という軽い感じで終わってしまったり、
「親がまだ証紙買ってくれません」という感じで家庭にも緊張感がない有り様。
そして、「どうせ合格するだろう」という安心感が世間に有り余っているこの中で、
入試手続きのデジタル化が始まり、願書もWEB上で提出可能となりました。
もはや証紙を買う必要もなくなり、クレジット決済です。
しかも、その作業を親がやっているので生徒は超楽チンになりました。
(2)すべて「1倍未満」

これは私が住んでいる地域の公立高校の受験倍率(令和8年度)ですが、すべて1倍を切っています。
昔は親も教師も「ちゃんと勉強しないと自分が困るんだよ」と言っていましたが、
今は通用しません。
じゃあ、〈何のために勉強するんだ?〉という問いに、親も教師もちゃんと答えられないといけません。
冒頭の若い中学校教師の「悩み」の本質はここにあるのだと思います。

2.学校教育は〝上〟から変わる
その勉強会では、参加している先生方がそれぞれに自分の考えを発表し合います。
私はどんなアドバイスをしたか。
その前に、私の考えはずっと前から変わっていないので、そのことをまず述べます。
4年前にこのブログで「人材育成の全体構造図・近未来編」というスライドをアップしました。
考え方はその時からほとんど変わっていません。
高等教育については次のように書きました。
【評価や入試の多様化】
①高校入試を教養重視から多様で個性的な形に
②普通科以外の多様な学科の充実
③共通科目の見直し
④「学びの本質」に基づく授業改善
⑤中間・期末などに頼らない多様な評価
これらは、ほとんどこの通りになっていると思います。
どうして4年前にこのことがわかったかと言いますと、大学教育がそういう流れになっていたからです。
そして、大学教育の変化は海外の先進国の変化を見れば予想がつきます。
学校教育は〝上〟から変わる
〝下〟からの変化は学習指導要領があるので〝遅い〟のです。
学習指導要領の改訂は10年に一度ですから時代の変化に追いつけません。
また、様々な利権もあるので〝急〟には変えられないと思います。
ですから、〝上〟からの変化を待つしかないと思っていました。
今、ようやくその波が高校入試に〝ちょびっとだけ〟かかって来ました。
つまり、「ちゃんと勉強しないと自分が困るんだよ」が通用しなくなりつつある段階です。
そこで、中学校の先生はどうするかですよね。
その素直な問いを、この先生は勉強会で投げかけてくれたわけです。

3.専門家の出前授業
私たちがアドバイスをする前に、その先生は言いました。
「解決方針を教頭先生と話し合って、来年度は地域の専門家を呼んで出前授業をして生徒の意欲を高めるてはどうか?」
この解決方針を聞いて私はガックリしました。
「それじゃあ何も変わらんだろ!」と心の声で叫びながら聞いていました。
学校に専門家を呼んで授業をしてもらったり、「語り」をしてもらったりするのはよくありますよね。
あれ、楽しいですか?
私は様々な分野の方々が学校の体育館で授業をされるのを何十回も見て来ました、
そうですね。宇宙の授業をされた専門家の授業の一回以外は退屈でした。
理由は明解です。
話が長いからです。
ただし、これは仕方がないことです。
その専門家の方々は授業のスキルを身に付けていないのですから。
責任は教師にあります。
ほぼすべてと言っていいほど、多くの出前授業では、担当教師が専門家に授業を〝丸投げ〟しているのです。
法的にも、それはダメです。免許がないのですから。
本来は、教師が授業をし、その中で専門家の方に出番を作る。そうした役割分担が必要なのです。
ですから、私は、〝丸投げ〟しないことをアドバイスしました。
※補足 現行の教員免許も〝ほぼペーパー免許〟なので同じです。「話が長い」教師は学校に必ずいると言っていいでしょう。そういう先生の授業に比べたら専門家を呼んだ出前授業の方がよっぽどマシです。椅子を持って体育館に移動する時間も稼げますし、生徒にとっては〝いつもの授業〟よりはマシかも知れません。

4.「時代の変わり目」に何をするか
ここからが本題です。
私はもうひとつアドバイスをしました。
それは、〈教科書に載っていなくても社会に出て役立つようなことを授業する〉ということです。
中学生や高校生は、本当は、学びたがっています。
学習したいのです。
それが彼らの意欲にマッチしないだけです。
彼らは彼らなりの窓で今の社会を見ています。
しかし、見え方はまだ〝子供〟です。
だからこそ、社会に出る前に教師が教えなければならないことは山ほどあります。
それを授業してあげればいいのです。
でも、出来ませんよね。
授業でやることは決まっていますから。勝手には出来ません。
しかし、法と組織の制約の中で可能なことはあります。
それをやってあげなければ時代は待ったなしです。
目の前の生徒は社会に出ます。
先に高校入試の変化の話をしましたが、制度は急には変わりません。
今は時代の変わり目です。
「変わり目」というのは生徒にとって不利なことです。
出て行く身ですからね。
ですから、なおのこと、現在の中高の教師は、「今出来ること」をしてあげるべきだと思います。
そのひとつとして私は、その場で「闇バイト予防教育」の模擬授業をしました。




