講座503 TSプロトコール(「パタパタ体操」)
1.
現在、学校や家庭では、愛着障害、発達性トラウマ症を抱えたお子さんが増えてきており、そういったお子さんへの治療法として、トラウマ処理の必要性が高まって来ています。
ただし、トラウマ記憶の言語化は危険な治療であり、EMDRなどの専門的な技能を持った医師しか出来ません。
しかし、そうしたライセンスを持つ《医師の数》が、治療を必要とする《子どもの数》に追いつかないという状況があります。
そこで杉山登志郎先生は、ライセンス抜きで比較的簡単に、しかも安全に実施できるトラウマ処理の技法を開発されました。
それが「TSプロトコール」です。
2.
杉山登志郎先生(福井大学子どものこころの発達研究センター)は、発達障害などのお子さんへの治療を専門とされているドクターです。
これまでに、発達障害を抱えた数多くのお子さんたちにトラウマ処理(親子併行治療も含めて)を実施されています。
その臨床経験の中で、記憶の想起をさせずに、もっと短時間で処理を繰り返すやり方が、トラウマ処理に《最適ではないか》と考えるようになりました。
そうして、現場の支援者が安全に取り組める手動処理(通称:パタパタ体操)が生まれました。
その治療効果は、すでに論文として発表されています。
「TS プロトコールによる複雑性PTSD患者へのRCTによる治療研究」(2020)
3.
杉山先生は札幌市で行われたセミナーの中で、この「パタパタ体操」について次のように言われました。
スクールカウンセラーの先生方などとも相談をして、学校ベースでの可能なトラウマ治療のやり方を考えることができる教師の組織として、TOSSの先生方にぜひ考えてみて欲しいです。
そこで私はセミナーから戻ってすぐに、TSプロトコールに関する杉山先生の著作群を読み込み、誰もが教室で簡単にやれる「パタパタ体操」を作ろうと考えました。
『トラウマ 「こころの傷」をどう癒やすか』(2024)
『発達性トラウマ症の臨床』(2024)
『テキストブック TSプロトコール』(2021)
『発達性トラウマ障害と複雑性PTSDの治療』(2019)
4.
しかし、その前に、まずは先生方に「発達性トラウマ症」や「愛着障害」についての杉山先生の考え方を伝える必要があるだろうと思い、ブログ記事「愛着障害の今」(1)~(3)を書きました。
私の現場経験がベースになっているので、かなり教師寄りの見方になっていますが、上記の本の基本的な内容はお伝えできたのではないかと思います。
そして、私自身もこの3本の記事を書くことで、「発達性トラウマ症」に対する理解ができました。
そこでようやく、誰もが教室で出来る「パタパタ体操」の作成に取り掛かることが出来ました。
講座500 愛着障害の今(1)
講座501 愛着障害の今(2)
講座502 愛着障害の今(3)
5.
「パタパタ体操」は朝の会でやるイメージです。
時間にして2分くらいですから、毎朝やることも可能です。
まず、杉山先生の動画を視聴してイメージを膨らませました。
そして、これに合う曲の作成を、元同僚で同じくTOSSで学んでいる小林亜津子先生に依頼しました。
その間に私は「パタパタ体操」を練習。
学校の先生向けの指導案も作成。
杉山先生にチェックしていただき、手のひらを柔らかく使うことと、撫でる時は左右交互にする点を直しました(2024/09/11)。
6.【教師向け】解説動画
■指導案はこちらからダウンロードできます。→ 「パタパタ体操」のやり方説明書(学校用)
■音楽はこちらです。→「パタパタ体操」の音楽
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