講座578 「発達の遅れ」は「遅れ」じゃない!

遊戯室で園児たちが集団遊びをしています。

ところが、B君は参加しないで先生のお膝に乗って絵本を見ています。

B君はどうして参加しないのでしょう?

具合が悪いのなか?

そう思っていると、突然B君はみんなの所に向かって走り出しました。

どうやらお気に入りの遊びが始まったからのようです。

でも、傍から見ていると、勝手に走り回っているだけで、まったく遊びに参加していません。

ルールを無視しているので、他の子の邪魔をしてしまう場面もあります。

これって、先生方はどう思っているのでしょうか?

しばらくすると、B君は再びみんなから離れて、先生のお膝の上に乗って好きな絵本を読み始めました。

すると、もう一人の先生がB君の所にやって来て言います。

「B君。やりたくなったらまた来てね。」

どうやらB君の行動はこれでいいみたいです。

今日は年中さんと年長さんの合同遊びのようです。

遊戯室には複数の先生方がいます。

集団遊びに参加できないB君を膝の上に乗せている先生。

集団遊びを進行する先生とそれを補助する先生。

ピアノを弾く先生。

役割分担がされている上に、B君への支援の仕方も確立されているようです。

集団遊びに参加できないB君は、好きな絵本を先生の膝の上で読んでいました。

一人でポツンとさせたり、好き勝手にフラフラさせたりしていませんよね。

これは「孤立させていない」ということなんです。

しかも、先生方はB君を無理に参加させようとしていません。

つまり、「先生の膝の上」は安心できる環境になっています。

発達心理学ではこれを「安全基地」と呼びます。

安心できる環境があることによって、不安は取り除かれ、愛情を補充できます。

そのような環境があると自分から集団遊びに参加する行動が生まれる可能性も出て来ます。

「やりたくなったらまた来てね」という先生の言葉の背景には、そのような理解があるわけです。

楽しそうだけど、遊びのルールに関係なく走り回る子への見取り。

これって、あの「遊びの6段階」の中の「並行遊び」ですよね。

今日の集団遊びはルールが決まっている遊びですから、6段階の中の「協同遊び」です。

「協同遊び」は4歳以上の発達課題ですが、園児によって発達に差があるのは当然のことです。

その「差」に対して、どのように対応するかが「支援」です。

基本は、6段階のステップを無理なく一段階ごとに自分から進んでクリアできるようにさせて行くこと。

つまり、無理やり参加させるのではなく、「並行遊び」を認めながら、少しずつステップアップさせて行くことです。

特に、ASD傾向のあるお子さんの場合は、発達の仕方に「差」があるのが〝普通〟ですから、そうしたことも理解した上での支援が必要になります。

ここで、ASD傾向のあるお子さんの発達の仕方を定型発達の場合と比べてみましょう。


定型発達の場合は、年齢が低いほどできない課題が多く、年齢が上がるにつれてクリアできる課題が増えます。

しかし、ASD傾向のあるお子さんの場合は、年齢が低くても本が読めたり、年齢が高くても対人関係が苦手だったりと、発達の仕方がバラバラになるのが〝普通〟です。

集団遊びは苦手でも、特定の分野(数字、歴史、電車など)に関しては驚くほど詳しい知識を持っているなど、そういうアンバランスさを持っている場合があるわけです。

ですから、定型発達が〝普通〟だとは考えずに、〈発達の仕方は子供によって異なる〉という考え方を基本にして見取ることが支援にとって重要となります。

園児たちの集団遊びが終わった時に、園長先生が次のように話して下さいました。

「今はB君にとって集団参加はまだ難しくても、卒園式の時にはできるようになったらいいなと思っています。」

卒園式はまだ半年以上先の行事です。

園長先生は、それくらいの長い時間をかけて、無理なくB君の発達を見守っていらっしゃることが分かる言葉でした。

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水野 正司

子育て応援クリエイター:「人によし!」「自分によし!」「世の中によし!」の【win-win-win】になる活動を創造しています。

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