講座555 自動販売機は知っている

私は全国各地の高校の先生方とも交流しています。
先日、興味深い話を聞きました。
高校に設置されている自販機にまつわる話です。
2.高校の自動販売機
3.「白い麻薬」再び
4.「三つ子の魂百まで」

1.理想の朝食メニュー
復習をかねて理想の朝食を確認しておきましょう。
理想の朝食=①主食+②たんぱく質+③汁物/野菜」
①主食は、ごはん、パンなどの炭水化物です。
炭水化物は消化されてブドウ糖になります。
ブドウ糖には二つの働きがあります。
(1)脳の活動を一定に安定させるエネルギー源
(2)体を動かす時のエネルギー源
米派と小麦派があると思いますが、どちらでもあまり変わらないようです。
こだわりたい人は、玄米、全粒小麦、オートミールなど繊維質が残っている穀物を選ぶといいでしょう。
理由は、消化が「よりゆっくり」になるからです。
子供には欠かせませんね。
②たんぱく質は、卵・納豆・豆腐・魚・ヨーグルトなどです。
体をつくるために必要ですが、朝食に摂ることで、一緒に食べた炭水化物の消化を「ゆっくり」にさせてくれます。
この「ゆっくり」によって、血糖値の急上昇が抑えられるわけです。
また、タンパク質を構成するアミノ酸の一部(例:トリプトファン、チロシンなど)は、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンといった神経伝達物質の前駆体ですから、どの程度まで脳に届くかはわかりませんが、効果を期待して食べてもいいように思います。
③汁物/野菜は、繊維が消化を「ゆっくり」にさせる効果と、水分と塩分の補給、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素の補給が期待できます。
また、「温かい食事」は交感神経のスイッチをONにしてくれるという効果もあります。
では、朝食を抜くとどのような悪影響があるのでしょうか。
(1)(2)の逆ですね。
(1)脳の活動が不安定になる
(2)体を動かす時のエネルギー源が不足する
それが「イライラ」や「集中できない」といった反応として表れてきます。
朝食を食べている人の方が、注意・記憶・行動などのパフォーマンスが高いことはいくつもの研究レビューが示されています。(参考:Adolphus 2016 / Hoyland 2009 / Lundqvist 2019)

2.高校の自動販売機
F高校の先生とこの話をした時のことです。
「うちの学校は朝食抜きの子が多いんですよね」とその先生は言われました。
そして、「自販機で甘いジュース(○○レモンなど)を買う生徒が多いんです」
自販機の「お茶」や「水」は、ほとんど選ばれないそうです。
この先生は清掃担当が自販機のある場所なので、ごみ箱を覗くと「○○レモンの山!」。
あまりにもひどいで、気になって娘さんに聞きました。
この先生の娘さんは母親の勤務校とは別のA高校(偏差値70程度)に通っています。
すると、A高校の自販機は「お茶」や「水」ばかりがズラーっと並んでいるそうです。
生徒たちが選ぶのも「お茶」か「水」。
学校がそうしているというよりも、もともと「お茶」か「水」を常にしている生徒ばかりいるという感じです。
だから自販機は「お茶」や「水」がズラーっ!
「改善しなきゃ!」と思ったF高校の先生。
教頭先生に相談しました。
「自販機からジュース類を減らして、お茶と水にしてもらえませんか?」
フットワークの軽い教頭先生はすぐに業者に電話をかけてくれました。
そしたら、なんとその返事。
「お茶と水を入れても売れないんですよね。ウチも商売ですからねえ」
撃沈。
世の中は資本主義経済でした。
その矢先に、F高校の自販機に新たな商品が!
なんと!あのヤバいエナジードリンクが登場!
当然、生徒たちは飛びつきます!
さすがにこれはダメでしょ!
もう一度交渉して、なんとかこれは撤回できました。
それにしても、衝撃の事実でした。
高校の自販機を見れば生徒たちの生活がわかる!
生活もわかるし、偏差値ランクまでわかりそうですね。

3.「白い麻薬」再び
講座48で「食事で発達障害を改善する」という記事を書いたのが2020年でした。
5年前の記事なのですが、今でも結構読まれています。
この記事の中で「砂糖は白い麻薬」という言葉を紹介しました。
アメリカの「マクガバン・レポート」で使われた言葉だったと思います。
今回もう一度ここで、「砂糖」について復習しておきたいと思います。
たとえば、朝食を「菓子パン」や「ジュース」だけで済ませる生徒への影響を考えてみましょう。
「理想の朝食」とは逆に、砂糖の影響はすぐに出ます(数十分~数時間後)。
ジュースは特に早いです。
血糖値が急上昇して、それを抑えるためにインスリンが分泌され、血糖値の乱高下(血糖値スパイク)が起こります。
一時的に気分の上昇があるかもしれませんが、その後に、眠気・だるさ・集中の落ち込みなどが表れやすくなります。
また、「砂糖入り飲料」は薬物とは違って「依存」にはなりませんが、「依存」と似た症状を起こすことがわかっています。
これは甘いものが「ごほうび(報酬)」になるからです。
つまり、脳の中で「報酬系(ドーパミン回路)」にスイッチが入ります。
報酬系が働くと、快感や満足感が得られ、「またやりたい」という意欲(モチベーション)が生まれます。
そして、快感と行動が結びつき、経験として学習され、記憶されます。
これには良い面もあり、悪い面もあります。
「砂糖入り飲料」で言えば、〈一時的に気分の上昇〉が記憶されてしまうのが悪い面です。
その後に起こる〈眠気・だるさ・集中の落ち込みなど〉よりも、飲んだ時の快感の方が記憶されるのです。
すると、どうなるか。
報酬系は「予測」という機能も持っています。
快感を記憶すると、いろんな行動をその快感に結び付けて予測するのです。
たとえば、
「もうすぐ休み時間」→「甘い物を飲んだらスッキリするはず!」
「スマホ通知音が鳴る」 → 「何か面白い情報が来たはず!」
「給食の匂いがする」 → 「もうすぐおいしいものが食べられるはず!」
この「予測」だけで、体は唾液が出たり、気分が前のめりになったりします。
特に、ADHDの人は報酬系が強く働きますから、休み時間が近づいただけで「○○レモン」を買うことは決まっています。
ほぼ無意識に自販機の前に立ち、ほぼ自動的に「○○レモン」を押すはずです。
また、報酬系の「予測」という機能はポジティブ思考にも関係しています。
スマホ通知音が鳴っただけで「面白い情報が来たはず!」と考えるのはポジティブですよね。
この仕組みの背後には、「快感」とつながった経験があるからです。
それが強く残っているのでポジティブなのです。
ですから、ADHDの人がいつでもポジティブだとは限りません。
強い挫折感を味わえば他の人と同じようにトラウマを抱えます。
ポジティブなのは報酬系が「快感」を「予測」するからです。
ですから、この予測が外れた場合は、通常の人よりも落ち込みます。荒れるかもしれません。
いずれにしても〈飲まないと落ち着かない/やる気が出ない〉となるのが悪い面です。
また、やめようと思っても〈離脱っぽい症状〉が報告された研究もあり、「習慣としてやめにくい」働きもあるようです。
以上が、〈砂糖〉の影響です。
「エナジードリンク」は〈砂糖+カフェイン〉ですから、更に強力です。
エナジードリンクは、「甘さの報酬」+「覚醒(カフェイン)」がセットになっているので、脳内で「これを飲むとスイッチが入る」という結びつきが強化され、習慣化しやすい条件がそろっています。

4.「三つ子の魂百まで」
砂糖入り飲料のことを「SSB(sugar-sweetened beverages)」と言います。
「beverage(ビバレッジ)」は「飲み物」ですね。
この「SSB」を習慣的に飲む子ども」に共通しやすい特徴というのはだいたいわかっています。
次の三つです。
①スクリーンタイムが長い(TV/ゲーム/スマホ)
②間食(スナック)頻度が高い/甘味嗜好が強い
③睡眠が短い・就寝が遅いなど、生活リズムが後ろ倒し
そして、このようなことは「子供の性格」によるのではなく「生活環境」によるものであることもわかっています。
さらに、もう一つ重要なのは、3~6歳の幼児期において既にこうした特徴が表れているということです。
どんな生活環境が関連しているかと言いますと、
①親のSSB摂取量が多い
②親の社会経済的地位が低いほどSSBが多い
③幼少期に食べ物を“ご褒美”にする
ということです。
私は③にドキッとしました。
ご褒美に「いわしスナック」をあげていました。
孫のために常備して使っていました。
さかなクン推薦のカルシウム、ビタミンD、DHA、EPAなどが含まれる栄養機能食品なのですが、ダメですかね?
それにしても、「3~6歳」で既に関連しているということは、
小学生では「手遅れ」ということですよね。
まして、高校生が「○○レモン」や「エナジードリンク」に走るのは、もはや止められない?
そして、もう一つの興味深い事実は、学力の高い高校の自販機には「水」と「お茶」がズラーっと並んでる。
つまり、学力の高い高校生は「SSB」を飲まない。「水かお茶」を飲んでいる。
業者は「水」と「お茶」が売れるので並べる。
この事実も衝撃的ですね。
ここからわかるのは、そうした高校生は乳幼児期に「砂糖」に気をつけて育てられたということでしょう。
もちろん、我が家は気をつけていました。
娘たちは全員「SSB」を飲みません。「水かお茶」です。
外食に行って「飲み物はいかがいたしましょうか?」と催促されても「水でいいです」です。
TOSS子育ての部屋の丹野真希さんは次のように記しています。
私の二人の子どもは、甘いものは好きではあるが、与えすぎないよう注意している。
おやつは、さつまいもを蒸したもの、りんごとレーズンを重ねて煮たものなど、自然の甘さが味わえるよう心がけている。出典:『向山家の子育て21の法則』(向山洋一・水野正司・TOSS子育ての部屋)
「自然の甘さ」という手がありましたね。これなら問題ないです。
せっかくですから、この本の中にある向山洋一先生ご自身の言葉を紹介して終わりにします。
食べ物で思い出すのは、娘が生まれた時に、甘いものは、あまり食べさせすぎないようにしようと思いました。カルシウムを破壊する甘いもの、脳へ影響し、制御作用が弱くなるということでしたから。出典:『向山家の子育て21の法則』(向山洋一・水野正司・TOSS子育ての部屋)
向山先生は「あまり…すぎないようにしよう」と書かれていますが、娘の恵理子さんは「チョコレートは禁止だった」と言ってましたよね。
そして、大人になった今でもチョコレートは食べないとか。
「三つ子の魂百まで」です。
参考文献:Association of Free Sugar Intake Estimated Using a Newly-Developed Food Composition Database With Lifestyles and Parental Characteristics Among Japanese Children Aged 3–6 Years: DONGuRI Study J Epidemiol 2019;29(11):414-423




親が頑張っても、祖父母や親戚、友達とその家族からの影響をどうするか、悩みます。更には、園や児童館でのおやつや行事の際に配るお菓子などの影響も困ります。
海外では、甘すぎる食品、脂質が高過ぎる食品、超加工食品等の宣伝に規制をかけているとか。日本でも、タバコの宣伝に規制がかかりましたよね。また、学校の自販機に甘いジュースを置くことを禁止したり、更に最近、アメリカでは、国からのお金で、上記のようなものを購入するような支援はしないとなったとか。
売っているものにそこまで悪い物は無いと考える人がいる事、企業は売れれば消費者の健康は二の次という事、、、それ以上に、子供たち含め大人にも、食育というか、情報を拡散させる必要があると感じます。
この方面も頑張ります!
取り上げてくださり、ありがとうございます。お菓子は色々な方面からもらうので、なかなか砂糖を避けるのは難しいですが、通常の飲み物はお茶か水です。小さい頃の家庭環境は、大人になってからも影響しますよね。幼いうちから子供に正しい知識を授けたいです。
そういえば、まきちゃんは食べ物を工夫するのが得意だったなあと思い出しました!(^^)