『元刑事が見た発達障害』
副題:真剣に共存を考える
今回ご紹介するのは、榎本澄雄『元刑事が見た発達障害』(花風社)2018年です。折り目30カ所。麻布署の知能犯担当係だった著者は警察を辞めて学校の支援員や児童デイの指導員となる。その榎本さんから見た特別支援の現場観。ちょっと変わった内容があちこちに出て来ます。
留置場は臭い
毎日お風呂に入れるわけではないので臭い場所だというのです。だから、匂いに過敏な発達凸凹の人にはそのことを教えておくことで防止につながるかも、というような内容が42ページに出て来ます。
生命、身体、財産以外は大目に見る
留置される人は簡単に言うことを聞くわけではないという。「毛布をかぶるな」と言ってもかぶってしまう。そういうやり取りでストレスをためてしまい、怒ってばかりいる看守、エネルギーを吸い取られて倒れてしまう看守がいるという。しかし、筆者は平気。それは警察法・第二条の「警察の責務」生命、身体、財産を守ることだけを第一に考え、それ以外は大目に見ることができるからだという。(45ページ)
これに続いて次のように指摘する。
学校ではどうでもいいことを矯正したがる傾向があるのかもしれない
確かに当たっている。給食の完食の強制で教室を飛び出すのはいい例だ。
子どもがキレることより、支援者がキレることの方が怖い。体調管理が大事。
これもよくわかる言葉だ。(47ページ)
警察官は留置人に怪我をさせません。そして、留置人が警察官を怪我させる事態も避けなくてはなりません。だから必ず警察官の方が人数が多い状況を作るのです。(49ページ)
こうやってフラッシュバックなどに対応しているという。学校にも必要なシステムだ。留置所には「ハグマシーン」もあるという。ハグをする機械だ。体を締め付けられることで落ち着く子もいるので、そのような道具まであるという。
学校の先生が放っておかないことでも私は放っておくかもしれない。逆に、学校の先生が放っておくことに私が放っておかないこともある。要は発達の課題を知っているかどうかであり、「何年生だから」という括りではない。(54ページ)
次は、「体罰を使わないでどうするのですか?」という質問の答え。
制圧します。「怪我せず、怪我させず」です。(57ページ)
シンプルだ。次のようにも言う。
とにかく現行犯にさせないことです。(59ページ)
具体的には、肩をポンポン叩く、握手する、くすぐる、肩や手を持って揺らす、暴れている時は後ろから抱きかかえる。見た目に「暴行」と受け取られないように対処するらしい。
パニックは脳が傷つく
これは私もずっと現場で大事にしてきたところだ。著者は次のように言う。
「支援者の人たちはしばしば、パニックが起きると「何が原因だったか」とか観察し、分析に入りますよね。でもそれはあとでいいんじゃないでしょうか。今苦しんでいるんだから今助けようと、というのが私の発想です。(60ページ)
いくつか紹介してきましたが、学校現場に警察官が入ると、違った視点があるということをお伝えしてみました。