講座544 幼児が脳を休める時

1.講座543へ頂いたコメント
講座543「脳の発達とイライラの関係」にコメントをいただきました。
これは、3歳前後に限らず、発展途上にある子供の脳、もっと言えば、脳が大体完成すると言われている24歳くらいまで起こりやすいのかな?と思いました。年齢が低い程、脳の発達が遅い程、起こるのかな?と。
そうですね。特に幼児期と児童期は顕著だと思います。
ワガママとか、我慢できず楽をするだとかも、ズルい奴とかダメな奴とかで大人は片付けてしまいがちですが、脳の発達過程だという目を持たないとと、改めて思いました。今回の記事で、私が小学生の頃、宿題をやらず、忘れ物ばかりだった謎が少し分かった気がしました。ずっと自分はダメな子だと思っていました。そして、もしかしたら、きちんと対応する大人と出会わなければ、本当にズルい奴、ダメな奴になってしまうのかな?と感じました。
理解してくれる大人の存在は大きいですね。
世の中には「自分はダメな子」だと思っている子どもが存在していると思います。
しかし、それは「らしさ」とは反対です。
感情や意欲が発達している幼児期・児童期には、自信過剰なほど「自分はできる」と思っていていいはずです。
それが「子どもらしさ」だと思います。
いろんなことに飛びついて宿題を忘れてしまうのも「子どもらしさ」ではないでしょうか。
そのような「らしさ」の背景にある発達順序について解説したのが前回の講座です。
読み取っていただいて有り難うございます。

2.脳の休め方は3つ
前回、書き忘れていたことがあるので、ここで補足します。
幼児期の特徴として、
脳内でのエネルギーの消耗が激しく、非効率で不安定なのでイライラしがちになる。
ということを書きました。
簡単に言いますと、メチャクチャ脳を使っているということです。
シナプス刈り込み現象自体が脳の疲れを生むわけではありませんが、
急激な神経活動の増加と、前頭前野の未熟さが「疲れやすさ」「情緒の乱れ」として表れやすいということです。
加えて、言語が発達している幼児では、論理的に考えたり会話をしたりできるがために(そのため)大きな負荷がかかり、「消耗 → イライラ → 反発」が目立つようになります。
前回の講座では、そのための対応方法として、次の7つを提示しました。
対応① 指示は短く・具体的に
対応② 話す前に注意を向けさせる
対応③A 怒・叱・否などで感情を刺激しない
対応③B 感情や意欲を言葉にしてあげる
対応③C 行動を選ばせる
対応③D 予定を合意形成する
対応③E 成功体験に導く
これらの対応に加えて大切になるのが《脳を休めること》です。
正確に言うと人間の脳は休むことがありません。
まったく休んでしまうと生命を維持することが出来なくなります。
ですから「休める」とは「止める」ことではありません。
脳の休め方には次の3つがあります。

タスクポジティブネットワーク(TPN)というのは、好きなことに没頭している状態です。
これは、正確には《休んでいる》ということにはなりませんが、ドーパミンが分泌されてバランスよく「フロー状態」に入るので、心理的には「休まっている」ように感じます。
この時、私の観察では子供は「子供らしい表情」を見せます。
デフォルトモードネットワーク(DMN)というのは、ボーっとする休め方です。
静かに自分の世界に入っている時間ですね。
そして、睡眠は外界からの刺激を遮断しますのでエネルギーの回復につながります。
また、レム睡眠は感情の処理、ノンレム睡眠は老廃物の除去という働きをするのでまさに《脳の休養》となります。
「寝る子は育つ」という諺がありますが、幼児期・児童期の子どもにとって睡眠が重要な理由は次の2つです。
(1)脳内でのエネルギーの消耗が激しく、情報処理が非効率で感情が不安定になるため
(2)外界からの刺激を遮断してエネルギーを回復させ、脳内をリセットさせるため

3.幼児のDMNとTPN
では、幼児のDMNとTPNとはどのようなことなのでしょう。
ボーっとする休め方がデフォルトモードネットワーク(DMN)でした。
大人は意識的にこれが出来ますが、幼児期の子どもには難しいことです。
ボーっとしたり、ぼんやりしているのは、なんだか子どもらしくありませんよね。
しかし、幼児には、このDMNと同じような脳の働きをする活動があります。
それは「空想」と「ごっこ遊び」です。
「空想」と「ごっこ遊び」は全く自由な活動であり、DMNの活動と関連することがわかっています。(出典:「脳内ネットワークの競合と協調」(2013)など)
もう一方のタスクポジティブネットワーク(TPN)は「フロー(没入)体験」のことです。
これは「遊び全般」ということになるでしょう。
私の観察では、遊びの中でも「子どもらしい表情になる遊び」というのがあると感じています。
激し過ぎずに、楽しく、ゆったりと遊んでいる時の幼児の表情はとても穏やかです。
そのような時が《脳の休養》になっているのではないでしょうか。

4.まとめ
前回の講座と今回の講座は、次の相談から始まりました。
3歳になる娘が幼稚園で先生の指示を聞けずに無視してふざけているので、先生からお説教を受けました。妹が誕生したばかりでストレスが溜まっているようだったで怒ったり小言を言ったりしないように気をつけようとと思っていた矢先のことでした。そんなことがあったせいでしょうか。今朝赤ちゃんを抱っこしたままブチギレて怒鳴りつける事態になってしまい3人で泣きました。
この場面に限らず、指示を聞けずに無視してふざけている幼児には腹が立つものです。
そこで、「発達順序の理解」という提案をしました。
原因① 「ワーキングメモリ」の未発達
原因② 「切り替え」の未発達
原因③ 感情や意欲が優位に発達している
7つの対応方法も提案しました。
対応① 指示は短く・具体的に
対応② 話す前に注意を向けさせる
対応③A 怒・叱・否などで感情を刺激しない
対応③B 感情や意欲を言葉にしてあげる
対応③C 行動を選ばせる
対応③D 予定を合意形成する
対応③E 成功体験に導く
それに加えて今回は脳の休め方を紹介しました。
❶睡眠はエネルギーを回復させ、脳内をリセットさせる
❷「空想」や「ごっこ遊び」などの全く自由な活動という休養
❸「子どもらしい表情になる遊び」という休養
「寝る子は育つ」という諺は《寝る子は健全に育つ》という意味なのだと改めて思います。
【おまけ】「大人の休養」






詳細にコメントを取り上げいただいてありがとうございます。
私が宿題できなかったのは、他にやりたい事があって忘れたというより、嫌なことをやるのが、本当に苦痛だったからです(笑)
しかし、大人になるにつれ、やりたくないけどやらないといけないことも出来るようになりました。
今回の記事では、子供の脳は、本当に発達途上で、ブレーキ、アクセル、シフトチェンジが、大人より上手ではないと感じました。電池が切れるように寝たりするのも、そのせいなのかな?と思いました。
文さん、コメント有り難うございます。
子供が「電池が切れるように」眠るのはまったく同意です!
脳が疲れてるんでしょうね。
でも、回復も早いですよね。
うらやましいです!
大人にとっての「攻めの休養」に関する画像を付け加えましたよ!
寝る以外でも休養は、取れるのですね。
よく考えたら大人も気分転換したりしますね。
子どもの表情を観察する視点が増えました。
勉強になりました。
そうなんです。
「子供らしい表情」ってありますよね!
それ、大事!