講座261 愛着障害・愛着不全について②
今回は愛着障害の改善方法についてまとめます。
2.組織対応の必要性
3.学校が取るべき組織対応
4.次回予告
1.愛着障害の改善方法
改善方法は「方法A」と「方法B」の2つがあります。
【方法A】その子と母親との愛着関係を修復する
【方法B】第三者による「安心基地」づくり
この2つはまるで異なる方法です。
レベルが違います。
望ましいのは「方法A」です。
愛着障害は母親との愛着形成が不完全だったことが主因ですからそれを修復するのが理想です。
ただし、これは容易なことではありません。「理想」です。
母親自身が苦しんで来たわけですから、それを期待するのは難しいことです。
母親一人に期待するのは乱暴なことです。
修復という動きをつくるのは医療や福祉などの機関です。
学校が関わる場合は、そうした機関に「つなぐ」「協力する」という形になります。
次に「方法B」です。
方法Bを実施する時は、「方法Aをあきらめずに方法Bを施す」という形をとります。
親子の愛着関係が修復されていない間も子どもは愛着障害に苦しんでいます。
生きづらさを支援しなければなりません。
ですから「方法B」は補助的に必要です。
この場合は子どもの一日の生活の中心となる学校が中心的役割を果たします。
ただし、方法Bの役割は「補助」だけではありません。
なぜなら、「方法Bを施した結果、愛着関係が修復した」という場合もあるからです。
その場合は「方法Bによって方法Aが成功した」という結果になります。
ですから、方法Bと方法Aは表裏一体という関係でもあります。
2.組織対応の必要性
ここまでを整理します。
【方法A】その子と母親との愛着関係を修復する
この場合は母親一人に任せずに医療や福祉が介入する必要があります。
家族が助けるという場合もあるでしょうが、専門的な知識が必要となるので、中心は関係機関です。
家族や地域や学校などは「関係機関につなぐ」という立場になるでしょう。
そうした連携・ネットワークが大切になります。
【方法B】第三者による「安心基地」づくり
この場合の中心は学校です。
そして、ここで言う「第三者」というのは「母親の代わり」です。
母親は「一人」ですから、その代わりも「一人」です。
つまり、学校の中の誰か一人がその子の「安心基地」になってあげることを指します。
学校は組織ですので、教員のみならず、学校職員全員がこのことを理解し、
その「誰か一人」を盛り立てる必要があります。
その「一人」とは、担任であるとは限りません。
担任との関係が良好ではない場合もあります。
それ以外の職員でも構いません。
その子が安心できる「一人」から始めるのが支援の基本になります。
次のチャプターでは、学校が取るべき組織対応をまとめて提示します。
3.学校が取るべき組織対応
5つにまとめました。
(1)小三が節目
通常ならば愛着形成の完成期は3歳です。
それが出来ずにいたということは、
その後の幼児期や児童期を不安なままに育ったということです。
取り戻すには早いに越したことはありません。
敢えて期限を定めるとすれば「小学校三年生まで」です。(米澤好史『「愛情の器」モデルに基づく愛着修復プログラム』)
小四以降は思春期が待っているからです。
学校の勉強が難しくなるという理由もあります。
(2)指導力の高い教師をつける
愛着障害の改善は容易なことではありません。
なぜなら、その子は「傷つきやすい」からです。
特別な配慮が必要になります。
校内人事では、指導力の高い教師に担当させるのが理想です。
具体的に言うと次のような要件を満たす教師です。
➀愛着形成を完成させた経験のあるお母さん教師
②愛着形成の仕方を熟知している教師
③自らの人生において愛着形成が出来ている教師
3つとも満たしている教師がここで言う「指導力の高い教師」です。
ただし、全部ではなくても一つでも満たしていれば「安心基地」になれるはずです。
(3)職員全員が「一対一の原則」を理解している
安心基地づくりの主役(キーパーソン)の必要性を職員全員が共通理解していることです。
(4)母親との信頼関係づくり
飽くまでも理想は「方法A(親子関係の修復)」です。
母親が学校不信になっている場合はこれが困難です。
保護者と学校の関係は重要です。
(5)包括的支援
愛着障害の改善は学校が単独で行うものではありません。
関係機関との連携が必要です。
管理職が中心となって関係機関とネットワークを構築することは極めて重要です。
4.次回予告
次回は、愛着障害を抱える子への具体的な対応方法について解説します。
講座262 愛着障害・愛着不全について③
大変勉強になりました。
学校に愛着形成のマニュアルがあればなと思いました。
学校はまだまだ手探りなところがあります。
悲しいかな学校にはそこまでの余裕がないでしょうね。でも、「お母さん先生」にはこの問題を解決する力があると思っています。
現場で発達障害への理解や対応はかなり一般的になってきました。
でも愛着障害に対しては、理解が広まっておらず、症状が重く対応の仕方が難しかったり、組織的な対応ができず安心基地の一人を作ることが難しかったりと課題が多いです。
そして、愛着障害の子をどうするか、も大事ですが、水野先生がされているように子育てスキルをひろめて愛着障害になってしまう子を減らすことがより大事だと思いました。
福祉で6ヶ月検診や一歳半検診などがあるので、その中で全部の保護者が学べる機会があれば多くの子が救われると思いました。産後1ヶ月検診で資料をもらえる、など繰り返し節目節目で目に触れる機会、母親学級で必須項目にする、母子手帳の必ず見るページに大きく記載する、なども効果的だと思いました。
10年くらい前でしょうか。そのためには法を作り、予算をつけなければなりませんでした。それで家庭教育支援条例という法律を作る活動がありました。連動して親守詩という親子イベントも実施しました。ところが、「子育ての仕方の押し付けだ!」とか、「三歳児神話の押し付けだ!」などと反対する人たちが出て、動きが停滞してしまいました。運動を理解してもらうというのは難しいことだと痛感しています。結局、草の根でやるしかないんだと思って「子育て講座」や「赤ちゃん学」を一人で始めました。このブログを通じて出会った方々には理解していただき、力になって頂けたら嬉しいです。