『自己制御の発達と支援』
今回ご紹介するのは、森口佑介編著『自己制御の発達と支援』(金子書房)です。折り目41カ所。
感情コントロールに関する本です。
なぜ、自己制御の研究が注目を集めているのかについて紹介しよう。それは、子どものときの自己制御の能力が、子ども将来の社会的成功や健康を予測することと関連している。2011年に報告された衝撃的な研究を紹介しよう(Moffitt et al.,2011)(6ページ)
と書かれ、ニュージーランドで1000人の赤ちゃんを対象におこなわれた研究について紹介されています。アメリカでのペリー就学前調査と同じような研究です。
大脳皮質の中でも、自己制御能力と最もかかわりのある脳領域は、前頭葉であう。(10ページ)
この本の中心は自己制御に関する脳の中の仕組みについてです。ちょっと複雑なので、私は以下のように解釈してみました。
思春期と対比するとわかりやすいです。
思春期…前頭前野より体が先に発達してしまう→本人に葛藤
イヤイヤ期…前頭前野より先に意欲(やる気)が発達してしまう→本人に葛藤
まず、これが大きな枠組み。
ちなみに「意欲」は線条体という部位が担当しています。
ここは「やる気スイッチ」とも言われる場所です。
脳の区別でいうと「動物脳」です。
イヤイヤ期は、コントロール不能下で意欲がバラバラに現れる時期だと理解しておいてください。
次に、年齢による違いです。
①2歳前後(情動的葛藤)
②4歳前後(認知的葛藤)
「前後」ですから1歳代で起きることもあれば、5歳になっても続くことがあります。健常範囲です。
情動的葛藤とは、情(感情)によって葛藤しているということです。
理屈じゃないです。
なんとなく湧き上がって来る気持ちで葛藤しています。
葛藤してますから、その瞬間の気持ちがどっちに転んでるかわかりません。
これが2歳前後のイヤイヤ期です。
ここでの養育者の対応ポイントは、
「情には情で」ということです。
コロコロ変わるその気持ちを受け止めてあげることです。
「今、やりたくないのかな」
「ああ、いやなんだね」
シンプルに情を受け止めるだけでOKです。
一呼吸おいたら気持ちが変わっているかもしれません。
本人にもわからないのです。
NGは「理屈」で勝負することです。
次に4歳前後。
最大の違いは「言葉」を使えるようになっていることです。
認知的葛藤というのは、言葉による葛藤です。
「ダメなのはわかっているけど」とか、
「AとBとどっちにしようかな」とか、
認知で葛藤しています。
ですから養育者も「知」で対応できます。
「知には知」です。理屈で教えるという支援が可能です。
話をしてコントロールを助けてあげるとか、
話をして本人に葛藤を返してあげるとか、
社会のルールを教えてあげてから返すとか、
そういう対応が基本になります。
もちろんここでも、一度時間を空けたり、気持ちを受け止めてあげたりしてからの方がスムーズです。
こうした枠組みで整理された文献は見つけられませんでしたが、
しいてあげれば、京都府八幡市の子育て支援センター通信が参考になりました。
最後に、イヤイヤ期の対応で最も大切ことについて述べます。
イヤイヤ期で一番大切なのは養育者の感情です。
養育者がネガティブな感情を抱かないことです。
・待つからと私が距離を置いています。←OK!
・そういう時は声をかけずに待ってます。←OK!
・「がんばれー」と心の中で応援しています←OK!
・クールに交わし続けるしかない←OK!
・コントロールしようとしない←OK!