『我慢力を育てるしつけの知恵』
今回ご紹介するのは、多胡輝著『我慢力を育てるしつけの知恵』(海竜社)です。
育児書にはブームというものがあって、脳科学の本が売れたり、ほめ方の本が売れたり、叱り方の本が売れたりして店頭に平積みされることがあります。この本は2005年発刊とあります。もしかするとこの年は「叱り方」や「しつけの仕方」がブームだったのかも知れませんね。
折り目は3個所付けました。
親に「大丈夫?」と問い掛けられると、ひどく痛かったような気持になってしまうのです。(中略水野)「大丈夫?」ではなく、「大丈夫ね」という言い方のほうが、子どもに我慢をさせやすことがわかってくると思います。(20ぺ)
本当でしょうか。私の考えは逆です。「大丈夫?」と心配してあげる言葉は悪くないと思います。「大丈夫?」と聞いて「痛い!」と泣いたら、「そうか痛かったんだね」と受け入れてあげることの方が、安心・安全・を生み、自分から立ち直る気持ちの土台となるのではないでしょうか。泣きたいときに泣くのは悪いことではないという、大河原美以さんの主張を私は支持します。
こう書くと、本を読んでいる私が本と対立しているように思われるかも知れませんが、こうしたことも読書の中の大切な一面です。「そうか、そういう考え方もあるんだ」とか、「こういう主張はどこから来るのだろうか」という勉強ができます。今回はそういう意味での折り目でした。
本書とは対立してしまいますが、我慢することが我慢する力をつけるのではないというのが私の考えです。我慢は自分からするものです。脳の抑制機能(ブレーキ、シフト、ナビ)が発達していなければ、我慢する力はつきません。脳の抑制機能を発達させるために必要なのは「言葉」と「愛情」です。安全・安心の環境があって、自分の行動を言葉で考えることができること。それが我慢する力になるのだと考えるのですが、いかがでしょうか。